【エ女王杯】牝馬の松田博師、エトワールで限定G1完全制覇締めだ

[ 2015年11月13日 05:30 ]

タガノエトワールに優しく語りかける松田博師

 秋の最強牝馬決定戦「第40回エリザベス女王杯」の出走馬が12日、決まった。来年2月で定年を迎える松田博師がタガノエトワールで牝馬限定G1完全制覇のラストチャンスに懸ける。前走・清水Sを勝ち、貴重なG1出走権を奪取。重賞勝ち馬タガノテイオー、タガノマイバッハなど、指揮官と縁の深い八木良司オーナーの所有馬で思い入れも熱い。幾多の名馬を育てた名伯楽の偉業成るか注目が集まる。同レースの枠順は13日確定、14日に前売りされる。

【エリザベス女王杯】

 幾多のG1を制してきた名伯楽が「あのレースを勝てたのは、本当にうれしかったわ」と顔をクシャクシャにして喜んだ。そのレースとは桜花賞でも、オークスでも、はたまたジャパンCでもない。答えはタガノエトワールの前走、準オープンの清水Sである。

 「グランパは故障したし、(オーナーの)八木会長の馬でG1に出ることはもうないと思ってた。それがこないだ勝って、最後にチャンスをもらえたんだからな。出ないことにはチャンスはない。秋華賞にはトライアルで権利を取って出られたし、春は準オープンを勝ってヴィクトリアマイルに出られた。大した馬さ」と松田博師。

 八木オーナーの京都の自宅には、数々の重賞の優勝レイが飾られている。ただ、その中にG1のものは一つもない。「大きな木馬があるんやけど、G1を勝ったらそこにレイを掛けたいそうや。それもあって、会長の馬は少し無理してでもG1を使ってきたよ」と師。“あと一歩”というシーンはあった。最も悔やまれるのは00年の朝日杯3歳S。東京スポーツ杯3歳Sの覇者として1番人気に推されたタガノテイオーは、中団で理想的なレース運びだったが、ラスト1Fすぎに左後脚に故障を発症。競走馬の本能でゴールまで走り切り2着で入線したが、左第1趾骨(しこつ)粉砕骨折と診断され、予後不良となった。

 「タラレバを言っても仕方ないけど、まともならぶっちぎってたやろ。ちっこい馬だけど、故障しながらゴールまで走り切ったように根性があった。無事ならクラシックでも活躍できたと思う。テイオーが無事なら会長もG1を勝つのに苦労しなかっただろうにな」

 牝馬限定のG1・6つのうち、5つを制している指揮官にとって、エリザベス女王杯は最後のワンピース。「俺のことはどうでもいいさ」と笑うのは本音だろうが、伏兵での一撃を虎視たんたんと狙っているのは間違いない。 

 ◆松田 博資(まつだ・ひろよし)1946年(昭21)1月29日、佐賀県出身の69歳。64年に騎手デビューして「障害の松田」と呼ばれ、中央競馬の障害最多勝記録(当時)となる通算150勝を達成した。83年に開業以降はベガやアドマイヤムーン、ブエナビスタといった名馬を育て、JRA通算791勝、重賞71勝、G1・19勝。来年2月いっぱいで定年を迎える。

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