シルクのアネさん東京好き

[ 2012年6月7日 06:00 ]

 中学の修学旅行で羽田空港に行ったのは忘れられない。離着陸する飛行機見ながらズラッと並んで弁当食うのである。「ひとが外国行くの見て何がオモロいねん!」と吐き捨てたのを今でも覚えている。人間というのは飛行機見て「クソッ」と思うか「憧れるなあ」と呟くかで、ヒネクレ者か素直人かに大別される。▼“トリテツ”とか言って写真撮る人間はいるが、一日中、ただ新幹線発着を見ている人間は少ない。井高野車庫前で一日中、大阪市営バスの出入りを眺める人間も少ないし、弁当食いながら駅前駐輪場の自転車を眺める者は精神状態が疑われる。でも牧場の柵にもたれてずっと馬を眺める者は「心優しき人」などと言われる。この差は何だ。馬と飛行機だけは一日眺めてていいのか?▼「スポニチG1特集号小説」は色々調べるので、自分でも驚く事が多い。阪神競馬場と武庫川との間に申し訳なさそうに建っている新明和工業、「ShinMaywa」というロゴは空港搭乗橋やミキサー車で時々見るが「一体何作ってる会社やねん?」と首捻っていた。▼でも今回一端が判明する。ゼロ戦は戦争初期こそ威力絶大だったが、改良した米グラマンに太刀打ちできなくなる。そこで本土防空のため“紫電改”が登場するが、この紫電改を作ったのが川西飛行機、いまの新明和工業だ。紫電改増産のため、鳴尾競馬場を(鳴尾記念の名だけ残して)テスト飛行場にし、戦後、爆撃被害の少なかった宝塚工場跡地を新競馬場として差し出したのも新明和である。飛行場と競馬場、紫電改とサラブレッドは交換可能の双子純愛だ。鳴尾(記念)から宝塚(記念)へは、新明和ミキサー車先導でパレードやるべきだ。▼エプソムは東京大好きシルアネ。(作家)

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2012年6月7日のニュース