【天皇賞・春】ダムール初制覇!世界進出も視野

[ 2011年5月2日 06:00 ]

天皇賞・春をヒルノダムールで制し、鞍上で雄叫びを上げる藤田騎手(右は2着のエイシンフラッシュ)

 「第143回天皇賞・春」が京都競馬場で行われ、ヒルノダムールがG1初制覇を飾った。前走・大阪杯を勝っていながら7番人気の低評価。最強4歳世代の中では地味な存在だったが、ライバルたちをねじ伏せて下馬評を覆した。2着も同じ4歳世代のダービー馬エイシンフラッシュが入った。1番人気のトゥザグローリーは道中、折り合いを欠き13着に敗れた。

【レース結果 戦い終えて】

 耐えて耐えて花咲いた。ヒルノダムールは道中インでじっと我慢。出入りの激しい流れにも動じず、タメにタメた脚を直線で爆発させた。ゴール前、詰め寄る同世代のダービー馬エイシンフラッシュを振り切り、悲願のG1ゴールへ飛び込んだ。

 デビュー以来手綱を取ってきた藤田は力を信じていた。「自由自在に操れる馬。直線までスムーズに競馬できて、それで負けたら力負け。腹をくくって乗った。4角までこれまでになくスムーズだった。何とか押し切ってくれると思った」

 昨年の3冠は皐月賞2着後はダービー9着、菊花賞も7着に終わった。藤田は「馬の力を過信して消極的すぎた」と悔いる。今回は意欲的に前へ。「スタートを上手に決めて、いつもよりできるだけ前で競馬しようと。内枠がいい方に出た。自分のことよりこの馬がG1を勝ったことがうれしい」。直線の追い比べでは道中の貯金が生きた。まさに信頼の勝利。最強4歳世代のライバルたちを打ち負かして、藤田は高々と人さし指を天に突き立てた。

 昆師は「これで最強世代の上位に肩を並べられたかな」と笑みを浮かべた。自ら北海道の中小牧場を回って素質馬を発掘するスタイル。橋本牧場で見つけたヒルノダムールは早い時期から大舞台を意識していた。だが気性面の若さや発馬難があり、賞金加算を焦らず使うレースを厳選した。それは「オーバーワークで成長を妨げたくない」という思いから。耐えたのは昆師も同じだ。「苦労して結果が出てくれる。馬に感謝です」と勝利をかみしめた。

 中間は雨予報。だが「京都は時計が速過ぎることがある。その後の反動を考えればむしろいい。宝塚記念も使いたいからね」と昆師は泰然自若としていた。その先に見据えるのは海外遠征だ。ダービー馬ディープスカイでは凱旋門賞挑戦を打ち出しながら故障、引退。昆師は「(春G1を)2つ勝ったら行かないとしようがないでしょう。凱旋門賞は旬の時に行かないと」と前向き。世代の頂点から世界へ。そのために次も負けられない。「今度は追われる立場。しっかり馬をつくっていきたい」と気を引き締めた。

 ◆ヒルノダムール 父マンハッタンカフェ 母シェアエレガンス(母の父ラムタラ) 牡4歳 栗東・昆厩舎所属 馬主・蛭川正文氏 生産者・北海道新ひだか町橋本牧場 戦績14戦4勝 総獲得賞金3億5536万3000円。

 【天皇賞・春アラカルト】

 ☆4歳世代 4歳馬の優勝は07年メイショウサムソン以来。世代別通算では46勝で最多。2位は5歳の20勝。また現4歳世代は今年、芝中長距離の重賞で13戦9勝の好成績だ。

 ☆2勝目 藤田はフェブラリーS(トランセンド)に続き今年G1・2勝目。通算15勝目。

 ☆2年ぶり 昆師は09年スプリンターズS(ローレルゲレイロ)以来2年ぶり5度目のG1制覇。

 ☆関西馬 関西馬の掲示板(5着まで)独占は08年以来3年ぶり。春天はこれで関東馬が42勝30敗。

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