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神の左は人さし指の一点で倒す 苦楽共にしたトレーナー語る

[ 2017年3月3日 08:12 ]

WBC世界バンタム級タイトルマッチ   ○王者 山中慎介 TKO7回57秒 同級6位 カルロス・カールソン● ( 2017年3月2日    両国国技館 )

大和トレーナーに肩車される山中
Photo By スポニチ

 山中を指導する帝拳ジムの大和心トレーナー(41)は、06年のデビューから二人三脚で苦楽を共にしてきた。現役時代は同じサウスポーで、王者の性格から好不調まで全てを把握するパートナーが、本紙に「山中という男」「神の左」を語った。

 慎介は元々フックが強い選手じゃない。胸なんて薄っぺらくて、フックでは相手が倒れない。筋力が強い部分は肩と背中。ボクシングを始めるまでは野球をやっていたから。だから武器はストレートなんです。

 神の左と言われていますが、かつてはナックルの薬指付近を当てていた。だけど、今当てているのは人さし指の部分。人さし指だけ握って残りは軽く握る感じ。人さし指の1点でアイスピックのように突き刺して倒す。自分も現役時代はKO勝ちの多い選手ではなかったけど、現役最後の頃にはピンポイントで当てて倒すことができた。そのコツを教えただけです。

 慎介は練習に臨む姿勢が凄く、自分に厳しい。だからメニューではわざとラウンド数を1回少なくしたりします。「もう1ラウンド」と言ってくるので、ちょうどいい。体重が落ちにくい時は練習しすぎてしまうので、日本王者の頃からつけている手帳のデータを見せる。「前回これだけやっても200グラムしか落ちなかった」とか。見せないと絶対に納得しない。典型的なB型人間ですね。人の話をあまり聞かない感覚派。試合の映像もほとんど見ないので、LINEで「見ろ」と映像を送ったりしています。

 デビューの頃は試合中にテンパっていたので、ラウンド間は普段と同じ口調で話すようにしました。アドバイスは良いところも悪いところも1つだけ。普段は話を聞かないのに、その時の言葉は覚えている。賢いんですよ。ただ(昨年9月の)モレノ戦だけは声を荒らげた。4回に返しの右フックに合わされてダウンしたのに、5回にも同じパンチで手をつきそうになったから「右フックは絶対出すな」と。その後は対策してきた通りにやってくれて泣いちゃいました。

 長く防衛を続けられる一番の理由は天狗(てんぐ)にならないから。天狗になるとアドバイスを聞かなくなるけど、少しずつでも聞いて自分のモノにしている。まんじゅうを買ってジムで配ったり行動が世界王者らしくないので、後輩も気を使わなくて済む。名字じゃなく「慎介」って呼ばれているのが、その表れと思います。 (帝拳ジムトレーナー)

 ◆大和 心(やまと・しん)1975年(昭50)7月9日、横須賀市生まれの41歳。小5から本格的にボクシングを始め、アマ通算36戦31勝(9KO・RSC)5敗。横浜高から帝拳ジムに入門し、94年6月プロデビュー。98年1月、日本バンタム級王座獲得(防衛2)。00年2月、東洋太平洋スーパーバンタム級王座獲得。01年に現役を引退後、「進ぬ!電波少年」出演などタレント活動を経て06年から帝拳ジムトレーナー。プロ通算24戦16勝(4KO)4敗4分け。

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2017年3月3日のニュース