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ファイティング原田氏に旭日小綬章 元プロボクサー2人目

[ 2016年11月3日 05:30 ]

リングの上でなじんだポーズを取るファイティング原田

 政府は3日付で16年秋の叙勲受章者を発表し、プロボクシングで日本人初の世界2階級制覇を達成したファイティング原田こと原田政彦・日本プロボクシング協会終身名誉会長(73)が旭日小綬章を受章した。現役時代の活躍のほか慰問活動などの社会貢献も評価されたもので、元プロボクサーの叙勲は日本初の世界王者、故白井義男氏に次いで2人目。今回最高位の桐花大綬章には江田五月元参院議長(75)が選ばれ、計4055人が受章した。

 現役時代のポスターや写真が飾られた横浜市内のジムで、原田氏は満面に笑みを浮かべた。「こんなに記者に囲まれるのは久しぶりだね」。2010年に日本プロボクシング協会会長を退任後、時折ミットを持つなど指導に専念してきた。05年に脳内出血で倒れて1カ月入院したが、退院10日後にゴルフコンペに参加するなど今も元気。「スポーツ界でも受章が難しい最高の栄誉。一生懸命やってきたことが評価されたのかな」と喜んだ。

 「人生で成功するためには勉強するか、金を稼ぐか、栄光をつかむか。僕は勉強ができなかったから、努力して栄光をつかめば金はあとからついてくると考えた」。中1でボクシングを始め、家計を助けるため米穀店で配達のアルバイトをしながら猛練習に励んだ。1962年に世界フライ級王座を獲得し、65年には「黄金のバンタム」と呼ばれたジョフレ(ブラジル)を破り2階級制覇。17階級4団体ある現在と異なり、当時のボクシングは8階級1団体。世界王者8人の時代の2階級制覇は偉業だった。テレビ視聴率は常に60%前後という国民的英雄で、WBC(世界ボクシング評議会)が「偉大なボクサー25人」に選ぶなど海外でも高い評価を受ける。

 ハングリーな時代。15キロ以上減量が必要な原田氏が水を口にしないようにジムの水道が全て針金で固定され、トイレの水を飲もうとした逸話は有名だ。「今の選手も頑張ってるけど、昔は苦しさがあったから頑張れた」の言葉には重みがある。唯一の心残りは69年、世界フェザー級王者ファメション(オーストラリア)を3度ダウンさせながら地元判定で負けとされた“幻の3階級制覇”。今後の夢を聞かれると「僕はできなかったから、3階級制覇できる王者を育てたいね」と語った。

 ◆原田 政彦(はらだ・まさひこ)1943年(昭18)4月5日、東京都世田谷区生まれの73歳。笹崎ジムから60年2月プロデビュー。62年10月、19歳6カ月でポーン・キングピッチ(タイ)に11回KO勝ちして世界フライ級王座獲得。65年5月には世界バンタム級王者エデル・ジョフレ(ブラジル)に2―1で判定勝ちし、日本人初の2階級制覇を達成した。70年に現役引退。通算63戦56勝(23KO)7敗。89年に全日本ボクシング協会の会長に就任し、7期21年務めた。

 ◇スポーツ界の主な叙勲受章者

 ☆野球 91年に鶴岡一人が旭日小綬章を受章。プロ野球選手初の叙勲受章者となった。92年には川上哲治、07年には稲尾和久が同章を受章

 ☆サッカー 09年に川淵三郎が旭日重光章を受章。94~01年までJリーグでプレーし、08~13年に名古屋グランパスで監督を務めたドラガン・ストイコビッチは15年に外国人叙勲で旭日小綬章受章

 ☆ゴルフ 91年に安田幸吉が瑞宝章を受章。93年に中村寅吉、15年に青木功がそれぞれ旭日小綬章を受章(敬称略) 

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