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田口 遠回り新王者!世界初挑戦プロ9年目“原点の地”で

[ 2015年1月1日 05:30 ]

8R、強烈な左ボディでロセルの腰を折る田口

WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦 ○同級8位・田口良一 判定 王者・アルベルト・ロセル●

(12月31日 大田区総合体育館)
 WBA世界ライトフライ級タイトルマッチで世界初挑戦の田口良一(28=ワタナベ)が王者アルベルト・ロセル(39=ペルー)に3―0で判定勝ちし、新王者となった。WBA世界スーパーフライ級王者・河野公平(34=ワタナベ)は同級5位ノルベルト・ヒメネス(23=ドミニカ共和国)と激しい打ち合いの末、三者三様の引き分けで初防衛に成功。ワタナベジムには3人の世界王者が同時に所属することになった。

 堅いガードに隠れていた脇腹が空いたのを、田口は見逃さなかった。8回、左ボディーアッパーがロセルにさく裂してダウン。9回にも左ボディーでキャンバスにはわせた。13・8センチのリーチ差を生かしたジャブで主導権を握り、試合2日前に「直感ですけど狙っていきます」と宣言した通りのパンチで倒してプロ9年目での戴冠。それでも「あそこまで来て、KOできないなんて駄目ですね」と反省を口にした。

 刺激を受けていた。前日(30日)、13年8月の日本ライトフライ級タイトルマッチで対戦し、スパーでもよく手合わせする井上尚弥が2回KOで2階級制覇。試合直前には控室で激励された。「衝撃的な勝ち方で、自分もと思ったけど駄目でした。パンチ力がないんですね」。だが、かつて井上とのスパーで何度もダウンし、4回の予定を3回で打ち切られてジムの隅で泣いていた男は、挫折をバネに成長した。

 小学校時代は大きな子供たちにいじめられた。「自信をつけたいと思っていた」田口が競技を始めるきっかけとなったのが、中3時に参加したボクシング教室。会場はこの日と同じ大田区総合体育館だった。その後、高1で入門した横浜光ジムを半年で辞め、ワタナベジムでプロデビュー後も椎間板ヘルニアで一度は引退を覚悟した。苦難の連続の末、原点の場所で歓喜に浸り「まさか、この場所で世界王者になれるなんて。運がいいのかな」と感慨にふけった。

 テレビ局が“ツヨカワ系”と紹介する優男。前戦では自身が倒れた場面を覚えておらず、この日もダウンシーンを質問されると「僕、ダウンしたんですか?」と答える天然ぶりで報道陣をずっこけさせた。初防衛戦は暫定王者ペタルコリン(フィリピン)との統一戦が有力。「これから強い相手ばかり。負けないように頑張る」。その言葉を口にして、ようやく世界王者を実感した様子だった。

 ◆田口 良一(たぐち・りょういち)1986年(昭61)12月1日、東京都大田区生まれの28歳。芝商高卒。06年7月、プロデビュー。07年12月、全日本新人王獲得。13年4月、日本ライトフライ級王座獲得。初防衛戦で井上尚弥に判定で敗れて陥落。1メートル66、右ボクサーファイター。

 ▼元WBC世界スーパーライト級王者・浜田剛史氏 打つべきところはしっかり打ち、慎重に戦っていた。体格面で勝っていたこともあり、自分の型を貫けたことが勝因となった。体格差を利した田口の左ジャブは有効で6、7回の左ボディーブローも効果的だった。

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