メジャーリーグ歳時記
広島・ジョンソン「4A」から日本で花開くまで…あの世界一フロントも喜び
108年ぶりのワールドチャンピオンに輝いたカブス。チームを再建した立役者は、MLB最高の編成担当と称されるセオ・エプスタイン編成本部長だ。彼の腹心がドラフト&育成担当の重役ジェーソン・マクロード氏で、ブライアント、シュワバーらワールドシリーズでも活躍した有望株をドラフトしてきた。その2人が、日本でプレーしているある選手の活躍に目を細めた。
エプスタイン氏が「それは良かった」と言えば、マクロード氏は「日本でそんなに活躍しているなんて本当に良かった。大学生だった彼をドラフトで指名したスカウト部長としては嬉しい」。今年、沢村賞を受賞した広島の左腕クリス・ジョンソンのことだ。
2人がレッドソックス時代の06年に、ウィチタ州立大のジョンソンをドラフト1巡全体40番目で指名した。当時GMだったエプスタイン氏は「3つの球種をコントロールよく投げられるし、メジャーでもローテーションに入れると思った」と振り返る。21歳だった期待の左腕は育成プログラムに沿って順調にステップを踏み、09年には3Aに昇格。しかし、そこで壁にぶつかった。
敏腕スカウト部長としてジョンソン指名に携わったマクロード氏は「ケガもあったが、一番は気持ちの問題。打者に向かってもっと攻めればいいのに、それができない。コーナーを狙いすぎてカウントを悪くし、ストライクを取りにいって打たれる繰り返しだった」と話す。毎年、有望株が大量に入ってくるメジャーでは、結果が出るまで待つほど甘い世界ではない。11年5月に解雇され、その後は独立リーグを経て、パイレーツ、ツインズと渡り歩いた。パ軍時代の13年9月1日、28歳にしてようやくメジャー初先発のチャンスを得たが、2回5失点KO。3Aではいい成績を残すが、メジャーでは結果を出せない、いわゆる「4A」のレッテルを貼られてしまった。
メジャーでは結局、7試合登板で1勝もできなかったが、異国の地で花開いた。マクロード氏は自分が目をつけた選手だけに、どこに行こうが成功を願っている。「私は09年を最後にレッドソックスを離れた後、一度どこかでクリスに会って話した記憶があるけど、結果が出なくてしんどそうだった。日本での成功を教えてくれてありがとう」。心の底から喜んでいる笑顔だった。 (奥田秀樹通信員)
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