担当記者が見た谷内亮太という男 “脇役”に徹して見いだした生きる術

[ 2023年9月19日 11:55 ]

キャンプでノックを受ける谷内亮太内野手
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 日本ハムは19日、谷内亮太内野手(32)が今季限りでの現役引退を表明したと発表した。木村文紀外野手(35)の引退発表から一夜明け、2日連続となるベテランの引退表明。日本ハム担当の清藤駿太記者(32)が、谷内への思いをつづった。

 「十人十色」。人はそれぞれ違った持ち味、特性を持つもの。各々が与えられた役割を全うすることで、より良い組織は生まれるものだ。それは、グラウンドでも同じ。言葉通り、体現していたのが谷内だった。

 内野の全4ポジションを守れるスーパーサブとして1軍に定着し、日本ハム移籍後の19年から22年途中まで守備率10割をキープ。「控えには控えの仕事がある。そこに徹することで、ファイターズに貢献できる場所を見つけた」。ホームラン打者とエースだけでは野球は成り立たない。チームが勝つため、最高の“脇役”になると心に決めたのだ。

 国学院大から12年ドラフト6位でヤクルト入団。即戦力として期待されてルーキーながら春季キャンプで1軍に抜てきされたが、すぐに衝撃を受けた。同じ遊撃には名手のレジェンド・宮本慎也がおり、同年限りで引退するベテランに圧倒されたのだ。

 「守備のスピード、確実性、打球の飛距離が全然違う。本当にここでやっていけるのか?と思った」

 開幕1軍には滑り込んだが、すぐに2軍落ち。そこで出会ったのが、土橋勝征2軍内野守備コーチ(現2軍チーフコーチ)だった。95年のリーグ優勝時には野村克也監督から「土橋は裏MVPだ」と称されるなど、複数守備を守れるユーティリティー性で黄金期を支えた一人。その恩師から徹底的に守備を鍛え上げられた。

 「球団の方針もあるけど、今の鎌ケ谷の練習を見ていると幸せだと思うくらい。試合後の特守とか本当にしんどかった。でも、あの時、練習しておいて良かったなと思う」

 ヤクルト6年間で思うような結果は残せなかったが、日本ハム移籍後は守備固めとしての地位を築いた。過去に控えの流儀を聞いた時、谷内はこう答えていた。「とにかく準備。途中守備でも、代打でも出られるのは一瞬。行くぞと言われた時に、その準備で本当に後悔しないのか?安心して試合に出られるのか?と、自分に言い聞かせてやってきた」と自負する。

 役割の生かし方は決してレギュラーに限ったものではない。競争の激しいプロ野球界で自分が生き抜く術を見いだしたからこそ、息の長い選手になれたのだと確信している。谷内、本当にお疲れさまでした。(日本ハム担当・清藤 駿太)

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