秋山 ヘッド寝かせてお目覚め打!同僚ムスタカスから得たヒント メジャーの「間」にピタリ照準

[ 2020年4月6日 09:30 ]

スポニチ本紙単独インタビューに応じるレッズ・秋山(撮影・笹田 幸嗣通信員)
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 西武からレッズに移籍した秋山翔吾外野手(31)が、本紙の単独インタビューに応じた。新型コロナウイルス感染拡大により、現在はロサンゼルスで自主トレ中。開幕が不透明な状況が続くルーキーシーズンに臨む決意を口にした。また、オープン戦好調の裏に、同僚の強打者マイク・ムスタカス内野手(31)から得たヒントがあったことも明かした。(聞き手・笹田幸嗣通信員)

 ――オープン戦中止と開幕延期により、練習拠点をキャンプ地アリゾナからロサンゼルスに移した。近況は?

 「平日はトレーニングをして、土日は休み。12月と変わらないですね。(練習内容は)ウエートトレーニング、キャッチボールをして、少しティー打撃をするくらいです」

 ――練習施設は同い年で親交のあるツインズ・前田の紹介。

 「使える施設を紹介してもらった。まだ開幕時期が不透明で、時期が見えればトレーニングの内容も変えたりとか、ボールを触る時間を延ばすことになると思う」

 ――日本に一時帰国する選手もいる中、その選択をしなかった。

 「生活する拠点とトレーニングする場所がそろい、幸運だった。通訳(ルーク篠田氏)もロサンゼルスの家を引き払う前だった。もし住む場所がずっとホテルで見通しが立たないというのならば、早い段階で日本へ帰るという選択肢もあったかもしれない」

 ――食事や買い物に困らないか。

 「そろえるものはそろえて、買い物は困らない程度にやっている。自炊もする。暇さえあれば作るというタイプではないので、通訳と協力しながら食べるものは作っている。(シンシナティに残した)家族と電話はしているし、元気にやっている」

 ――オープン戦10試合で打率・321、0本塁打、1打点。準備してきたものと感覚にズレはあったか。

 「本塁打が出るとは思っていなかったけど、もうちょっと外野にフライが上がると思っていた。ズレというほどズレはないが、合わせている段階だった」

 ――逆方向への打撃を大事にしていたか。

 「逆方向に打てていれば大崩れしないだろうと思っていた。ただ日本の投手より5キロくらい速いので、5キロ分早く準備しなきゃいけない。それに対して逆方向に奇麗に打つのは不安があった。最初の頃は投手の球に合わせる時、力を入れたい分だけヘッドを使いたい、使いすぎるとバットの面が合わないとか、ジレンマがあった」

 ――過去の日本野手は、動作の一部を“省く”作業をする中でいかに間合いを保つか、が最初の課題だった。

 「本当にそうだと思う。例えば日本人で160キロの球を投げる投手がいたら、ゆったり足を上げて体全身を使って投げる感じ。外国人は160キロを投げるのに7割の体の動かし方でも出てしまう。それがコンマ何秒の世界。そのちょっとが自分にとっては間をつくりきれない。最初はすり足とか、2段で足を上げたりとか、一回引いて上げるとかやったけど、自分のスイングの間が間に合わない」

 ――その壁をどう乗り越えようとしたか。

 「オープン戦で3戦連続安打が出た時は、その前の試合から明らかに変えたところがあった。フリー打撃でムース(ムスタカス)と初めて同組になった時、ケージが一緒になり横から打撃を見た。ムースはテークバックを取った時に1回バットを外側に、左肩の方に寝かせる。僕はやっぱり強く打ち返したいと思うと、どうしてもヘッドをなるべく遠いとこから持ってきたいというのがある」

 ――その意識が強すぎた?

 「たぶん、過剰にヘッドがヘルメットの上で投手の方まで出ていたはず。ムースがその打ち方でホームラン35本(昨季)を打てるんだと思ったら、俺は絶対、ヘッドが入りすぎだなと思った。それをやったら軸足に間が乗るようになって、バットのヘッドの抜けが抜群に良くなった」

 ――開幕時期が見えず難しい調整が続く。

 「言い訳して助けてくれるような環境ではない。言い訳することほど見苦しいことはない。“あなたが選んだ道でしょ”と自分でも思うし、嫌ならやめればいいだけのこと。自分と見つめ合っている時間が長い。だから、しっかり自分の考えを持ってやらないと」

 ――改めて、メジャー1年目への抱負を。

 「やるしかない。終わった時に同情されるような結果とか、仕方ないよと思えない性格だから。“今年コロナがあって大変だったよね”って言われるのがめっちゃ嫌。だから、何とかしたいという思いはより強くなった」

 ――この経験をプラスに変える。

 「こんなに、まとめてたくさん経験できている時期もない。現役を引退した後に同じことがあった時に“秋山さん、あの時どういうふうに練習したんですか?”と聞かれるくらいの成績を残せたら“俺、あそこで踏ん張ったんだな”と思えるかもしれない。よりチャレンジに厚みが持てるような出来事に、ポジティブにばかり言えないけど、(プラスに)なるようにやりたい」

 《取材後記》「僕は今のところSNSで発信しようという考えは頭にないんです」。秋山はインタビュー後、こう自ら切り出し、さらに続けた。「僕はメディアの方と話しながら自分の頭で整理して話している。自分一人だとどうしても感情的になりやすいと思うので、僕はこの方が話しやすい」。コミュニケーションを図った上で熟考し、ファンへメッセージを伝える。彼の囲み取材が他選手よりかなり長くなる理由が分かった。

 簡単に多くの情報が入る時代だからこそ「自分の考えをしっかり持たないといけない」という。それは子供たちへのメッセージとも重なった。「情報があふれている。いろいろある分だけしっかり自分で考え、見極めてほしい」。米1年目に降りかかった苦境。自分らしさを見失わずに向き合う秋山の姿は、手本となるだろう。(大リーグ担当・笹田 幸嗣通信員)

 《TBS「サンデー…」テレビ出演 日本帰国予定なし》秋山はこの日、TBS系列の「サンデーモーニング」にロサンゼルスからテレビ電話で出演した。チームメートの現状について「(開幕を)けっこう諦めている選手もいれば、(多くの)試合数をやりたい選手など、さまざま」と説明。日本への帰国の可能性については「帰ってから2週間、米国に戻って2週間(の隔離生活)となるとつらい。こっちに残ったままキャンプに合流か、シーズンに入るのが理想。今のところは帰らない予定」と語った。

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