センバツ史上最速153キロ腕の今 宇治山田商・平生さん 憧れの消防士に

[ 2019年3月25日 08:29 ]

現在は伊勢市消防本部消防署二見出張所に勤務する平生さん
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 【平成センバツヒーロー あいつ今なにしてる(2)】観衆の度肝を抜いたあの時から11年。聖地に刻んだ「153」は今なお破られていない、センバツ史上最速記録だ。今は野球のユニホームを脱ぎ、消防服に身を包む平生拓也さん(28)は、指先を見つめながら宇治山田商(三重)の3年春に思いをはせた。

 「リードされていて、これ以上点を与えるわけにはいかなかった。球速表示を見た時は“出た!”という感覚でしたね」

 2008年(平20)の安房(千葉)との2回戦。当時プロから注目を浴びた剛腕は2回までに3点を失うと、3回からワインドアップに変えた。1死で4番・鹿嶋へ投じた初球が153キロを計測。自己最速を一気に5キロ更新、スピードガン普及後のセンバツ最速だった柳ケ浦・山口(現巨人)の151キロを抜いた直球で流れを引き寄せ、逆転サヨナラ勝ちを呼んだ。

 高校最後の夏は腰痛と右内転筋の肉離れに苦しみ、三重大会決勝は菰野の西(現阪神)に屈した。プロ志望届を提出したものの指名漏れし、西濃運輸へ。西はオリックスで実績を積み上げる一方、平生は社会人でも故障に泣き、公式戦登板を一度も果たせず引退した。

 高2の時、自宅で倒れた母を消防士に助けてもらった。中学時代の職場体験から憧れていた職業を、野球の次に選んだ。重い職務の緊張感に包まれながら、やりがいを感じる日々だ。「西は同世代のエースとして活躍してほしい。自分は自分で伊勢市に恩返しができれば」と語った。(吉仲 博幸)

 ◆平生 拓也(ひらお・たくや)1990年(平2)10月6日生まれ、三重県伊勢市出身の28歳。宇治山田商では1年春からベンチ入りし、2年夏と3年春に甲子園出場。2試合ずつ投げ、3年春は20イニングで24三振を奪った。卒業後は西濃運輸へ入社。14年から伊勢市消防本部で勤務。右投げ右打ち。

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