【石井一久クロスファイア】熱が伝わる大谷「Face to face交渉」

[ 2017年12月6日 11:30 ]

日本ハムの大谷
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 日本ハム・大谷のメジャー移籍に向けた動きが、一気に本格化してきた。書類による1次審査を突破した面談がスタート。日本ではFA交渉に選手が同席するのは一般的だが、メジャーでは珍しい。米国は契約社会。極端に言えば、契約書のやりとりだけでも交渉は成立する。でも、面と向かって話す、いわゆる「Face to face(フェース・トゥー・フェース)」の交渉は大事だ。特に言葉の違いがある場合は。

 それは代理人選びでも言えること。僕は01年オフにポスティングでドジャースに移籍したが、当時、いろいろなエージェント会社から誘いがあった。どこで調べたのか、自宅のファクスにいきなり契約書が送られてきたり、贈り物が届いたことも。そんな時、窓口になってくれたのが、マネジメント契約を結んでいた吉本興業だった。

 エージェント会社にもそれぞれ特徴がある。大型契約を得意とする会社、特定の球団とパイプがある会社、あるいは特定のポジションの選手に強い会社…。吉本興業が5社ほどに厳選した中から、グラビン、マルダーらトップクラスの左腕を多く抱えていたオクタゴン社を選んだ。しかし、これで契約完了ではない。

 まずは通訳を介して電話ミーティング。次は代理人が来日し、今度は直接会って話す。ある程度の信頼関係ができて、初めて契約書へのサインとなる。その時、代理人に言われたのが、「顔を見て話さないと、選手の熱や思いが伝わらない」という言葉。やはり、お互いの考えや方向性が一致しないと、いい契約を結ぶことはできない。

 二刀流で挑戦する大谷は起用法が焦点になるので、球団選びも大変だと思う。事前に球団から送られた資料だけではなく、「Face to face」の交渉を行うことで、信頼関係が生まれ、紙では分からない何かも見えてくるはずだ。

 球団との契約書は日本では2〜3枚程度だが、メジャーは分厚い辞書ぐらいある。それを通訳と一緒に1ページずつ目を通しながら、代理人から説明を受けたことを思い出す。ちなみに、僕が所属する吉本興業には契約書は存在しない。わびさびを重んじる会社なのだろう。 (スポニチ本紙評論家)

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2017年12月6日のニュース