時代とともに変わるメジャーリーガーの体づくり、進む高度化(上)

[ 2016年3月5日 17:00 ]

ハイドロセラピー要プール。水中に5台のカメラが設置してあり、モニターで体の動きをチェックできる

 MLBのキャンプは大所帯だ。メジャーキャンプは招待選手を含めて約60人、マイナーキャンプは約150人。総勢200人以上が約1カ月半を過ごす。ダルビッシュの所属するレンジャーズとロイヤルズはアリゾナ州サプライズ市でキャンプを行っているが、昨年、市がキャンプ施設の改築費用2200万ドル(約25億円)を負担すると決めたことで、7年の契約延長に合意。2029年までこの施設を使用することになった。

 2月18日の集合日。ダルビッシュは使いやすくなった新施設を歓迎した。「今まではウエートルームが狭く、マイナーの選手も入り乱れると、全く何もできなかった。それが本当に広くなった」。その日の午後、担当記者にも公開された。

 ウエートルームは595平方メートルで、昨年から5倍の大きさに。有酸素運動のカーディオ・マシンのエリアも260平方メートルの広さ。クリス・ジメネス捕手は「去年まではエアロバイクが2台、トレッドミルが1、2台と絶対数が少なかった。誰かが使い終わるのを待たないといけないので、トレーニングも能率が上がらなかった」と振り返る。

 選手が過ごすクラブハウスはフットボールのような楕円形で、広さ278平方メートルの70人収容。隣接する食堂とキッチンは127平方メートル、治療を行うトレーナー室も93平方メートルで、ハイドロセラピー(水治療法)の部屋と隣接している。ジメネスは「広いだけでなく、使いやすい。部屋から部屋への移動も、スムーズに直線的に行ける」と話す。

 サド・ラバインGM補佐はフロントの視点で、新しい施設の狙いを説明する。「今のMLBでチームの浮沈の鍵を握るのは、選手の体を162試合でどれだけ健康に保てるか。ケガをした選手のリハビリを効率的に行えるか。トレーニングだけでなく、栄養をどう摂取するかも研究や分析を進めている」。レ軍の食堂には完全装備のキッチンが付き、フルタイムの栄養士と調理師が働く。

 今回のリニューアルのデザインを任されたのは、メディカル部門のディレクター、ジェイミー・リード氏。彼はアスレチックトレーナーとして35年の経験がある。80年代を振り返り、当時の施設についてこう話す。

 「私はオリオールズにいたが、キャンプ地はマイアミスタジアムで、練習グラウンドは1・5面だけで、施設も狭いロッカーとトレーナー室のみ。ウエートルームはなかった」

 ひと昔前は「野球の体は野球で作る」という考え方。選手は毎日の練習と試合で体を鍛え、レギュラー選手は毎試合9イニングをプレーするのが普通だった。しかし、その考え方は時代とともに変わりつつある。今では、ウエートトレーニングやコンディショニングは野球の技術練習と同じぐらい重要になっている。(奥田秀樹通信員)

続きを表示

2016年3月5日のニュース