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矢吹正道が9回TKOで世界王座へ返り咲き! 家族はじめ周囲の支えで挫折を乗り越えた

[ 2024年10月12日 19:30 ]

<IBF世界ライトフライ級 ノンシンガ・矢吹>2R、左フックを決める矢吹(右)(撮影・椎名 航)
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 プロボクシングIBF世界ライトフライ級タイトルマッチが12日、愛知県国際展示場で行われ、元WBC同級王者でIBF同級2位の矢吹正道(32=LUSH緑)が王者シベナティ・ノンシンガ(25=南アフリカ)を9回1分50秒、TKOで破り、世界王座に返り咲いた。

 序盤からジャブで差し勝ち、ワンツーや、いきなりの右で主導権を握った。王者得意の右オーバーハンドは完璧にブロック。そして8回終盤にはワンツーからの連打で最初のダウンを奪った。続く9回は右ストレートなど連打で、さらに2度のダウンを奪い、レフェリーストップを呼び込んだ。

 家族をはじめ周囲の支えで復活した。21年9月にWBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗に10回TKO勝ち、世界初挑戦でベルトを巻いた。しかし22年3月にダイレクトリマッチで寺地に3回KO負け、初防衛に失敗した。

 その直後には「(ボクシングを)やめようと思った。今までそんなことをしたことがなかったけど試合翌日から酒を飲んで。割り切るつもりだった」。ボクサーは試合で脳に深刻なダメージを受けている危険性があり、試合後まもなくの飲酒は厳禁とされる。半ば自暴自棄だった。立ち直る力をくれたのは同じ競技に励む長女の夢月(ゆづき)さん、長男の克羽(かつば)さんだ。「子供が頑張っているのに俺のせいで、それ(2人の努力)がナシになってしまうのは嫌だった」。自分がグローブを吊してしまえば、子供も競技から離れてしまうかもしれない。「せめて教えるだけでも…」と試合数日後からミットで2人のパンチを受けた。体を動かすうちに前向きな気持ちが湧いた。一緒にロードワークにも出るようになり「俺もやめなくていいか」。現役続行を決めた。

 22年9月に再起し、23年1月にIBF同級2位決定戦を制した。世界再挑戦の機会を待つ間に再び試練が訪れた。同年5月のスパーリング中に左アキレス腱を断裂。またも「引退を考えた」というピンチ。兄弟同時の世界王者という目標を持つ弟の力石政法ら周囲から励まされ現役続行を決断。今年3月の復帰戦を4回TKOで快勝した。

 スーパーフェザー級で東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座を獲得した実績を持ち、既にWBC世界王座への挑戦権を得ている弟の力石は17日に大橋ジムへの移籍初戦を控えている。それでも名古屋へ駆けつけ、兄のセコンドについた。

 夢月さん、克羽さんの2人は9月29日に東京都立川市で開催されたジュニアチャンピオンズリーグ全国大会に出場し、それぞれのカテゴリーで全国制覇した。「最高のバトンを渡された。2人そろって優勝するとは。感動、感激。燃えましたね」。強いパパの姿を世界戦のリングで示した。

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