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尚弥V6 衝撃TKO米デビュー「モンスター」ぶり見せつけた

[ 2017年9月11日 05:30 ]

WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦   ○王者・井上尚弥 TKO6回終了 同級7位アントニオ・ニエベス● ( 2017年9月9日    米カリフォルニア州カーソン )

井上尚の右脇腹をえぐる左ボディーブロー苦もんの表情を浮かべるニエベス
Photo By スポニチ

 王者・井上尚弥(24=大橋)が米デビュー戦に完勝した。ロサンゼルス近郊のカリフォルニア州カーソンで行われた6度目の防衛戦で挑戦者の同級7位アントニオ・ニエベス(30=米国)から5回にボディーでダウンを奪い6回終了TKO勝ち。本場のファンと関係者に愛称どおり「モンスター」ぶりを見せつけデビューからの連勝を14に伸ばした。

 試合後の公式会見で米国人記者が壇上の井上尚に向かい、「モンスター」と呼びかけて質問した。堅苦しい「イノウエ」でも、フランクに「ナオヤ」でもない。ワンサイドゲームで米デビュー戦を飾った、日本の怪物への敬意が含まれていた。

 圧倒した。左ジャブでコントロールし、2回に右でぐらつかせると、アッパー、ボディーと多彩に攻めた。5回には左ボディーでダウン経験がなかったニエベスに右膝をつかせるダウン。6回、逃げ回る挑戦者に対して両手を上げ「来い」と挑発するパフォーマンスで沸かせたが、ニエベスはラウンド終了後に棄権を申し入れる拍子抜けの幕切れ。「中盤あたりから逃げ一辺倒だった。これじゃ試合にならない」と苦笑した。

 過去の日本人選手とは異なり、米国側から要望されての本場デビュー。ボクシング中継の老舗HBOが全米生中継する、スーパーフライ級のトップを集めた興行のセミファイナルに抜てきされた。待ち望んだ舞台に「モチベーションが違う。きつくなると米国を考える」と過酷な走り込みに耐え、慣れない環境を考慮して早めの減量にも取り組む中、米国側が選んだ挑戦者の実力だけが心配だった。「骨のある相手とやりたかった」。漏らしていた不安が的中し「今日みたいに、相手に勝つ気がないようだと試合自体が枯れちゃう。白熱する試合がやりたい」と訴えた。

 それでも、米メディアは絶賛の嵐だ。HBOスポーツのネルソン副社長は「ずっとオファーを出していた。ボクシングに詳しい人たちにも、素晴らしい選手と分かってもらえたのでは」とコメント。専門誌リングは「速くて正確なパンチャー。ボクシング界屈指のボディー打ちの名手」と評価。スポーツ専門局ESPNは「モンスターというニックネームどおりの結果」、専門サイトのファイトニュースは「フリオ・セサール・チャベスを思わせる左フック」と報じた。

 「米国でスーパースターになれると思うか?それとも軽量級なので無理と思うか?」と問われ、井上尚は「今後、そういうボクシングを見せたい。階級を上げていく予定」とバンタム級以上での活躍にも自信を示した。目指すものも、理想もまだまだ先にある。モンスターが輝くのは、この夜以上の舞台だ。

 ≪米で米国人に防衛は初≫海外で防衛に成功した日本人世界王者は渡辺、西岡(2回)、三浦、亀田興、亀田和(2回)、河野に次ぎ井上尚で7人、9例目。米国での防衛成功は西岡、亀田和、河野以来4人、5例目。過去に米国で米国人と防衛戦を行ったのは11年7月の下田昭文(元WBA世界スーパーバンタム級王者)だけで、7回KO負け。井上尚は初めてアウェーの米国で勝った日本人王者となった。

 ≪鬼門だった米世界戦≫米国で開催された世界戦でKO勝ちした日本人は井上尚弥で3人目。28戦で3試合と、米国でのKO勝ちは難度が高い。過去には80年8月に上原康恒が、デトロイトでサムエル・セラノ(プエルトリコ)に6回KO勝ちしてWBA世界スーパーフェザー級王座を奪取。14年7月には亀田和毅がラスベガスでプンルアン(タイ)に7回KO勝ちし、WBO世界バンタム級王座を防衛した。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川県座間市生まれの24歳。新磯高(現・相模原青陵高)時代に高校7冠に輝き、12年10月プロデビュー。14年4月に6戦目でWBCライトフライ級王者に。同12月にはWBOスーパーフライ級王者となり、日本最速となる8戦目で2階級制覇を遂げた。右ボクサーファイター。

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