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山中V12!神の左で5度倒した 具志堅に王手

[ 2017年3月3日 05:30 ]

WBC世界バンタム級タイトルマッチ   ○王者 山中慎介 TKO7回57秒 同級6位 カルロス・カールソン● ( 2017年3月2日    両国国技館 )

第8R、山中の最初の左で崩れ落ちる挑戦者の顔面を山中の左が再び襲う
Photo By スポニチ

 不滅の記録に神の左で王手をかけた。ボクシングのWBC世界バンタム級王者・山中慎介(34=帝拳)が7回57秒TKO勝ちして12度目の防衛に成功。挑戦者のカルロス・カールソン(26=メキシコ)を全て左で5度倒し、具志堅用高(元WBA世界ライトフライ級王者)が持つ日本記録の13連続防衛にあと1つと迫った。世界戦13勝目、世界戦9KO勝利はいずれも歴代2位タイとなった。

 メキシコからの挑戦者を5度倒した。それも全て左で。だが、その内容は同じではなかった。5回に2度ダウンを奪ってから、山中はタフでならす相手の右を食ってのけぞり、さらに一発もらって後退。6回にもダウンさせながら再びパンチを受けた。変わったのは、セコンドの指示を受けた7回。ジャブで的確な距離とリズムをつくり左を打ち込むとカールソンの体はグラグラと崩れ、2度キャンバスに落ちた。

 「序盤は体重が乗り切らなかったところもあった。(5回は)後先を考えずに行き過ぎて、クリンチワークも良くなかった。セコンドの指示で最後のラウンドは右のジャブがいい状態になって、フィニッシュできた」

 昨年9月のV11戦ではダウンの応酬の末、難敵モレノ(パナマ)との再戦にKO勝ち。年間MVPや年間最高試合に選出されたが「もっとインパクトのある試合を」と誓っていた。内容的には「良さも悪さも出た」と反省を残したものの、大和心トレーナーは「(相手に)流れが変わった時に、軌道修正をしながら最後に当てたのは凄い。相手が警戒しても左を当てるんです」と称えた。

 前WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志(ワタナベ)も届かなかった、「具志堅のV13」に王手をかけた。だが、山中は「皆さんが期待して、楽しんでもらえればいい」と人ごとだ。興味があるのは試合内容で、より完璧に近い自分。「試合が終わると悪かったところを意識してしまう。完璧というのは永遠にないけど、どこまで満足できるか」。だからこそ今回もレベルアップに励んだ。1月に行った1週間の沖縄キャンプでは最終日にクロスカントリー走で自己最速タイムをマーク。大和トレーナーを「脚の出来が違う。左の威力はまだ伸びている」と驚かせた。シャドーから小型ミットに拳を当てて左をピンポイントで突き刺す精度を高め、右ジャブも打つ距離やタイミングなどバリエーションを増やした。

 今秋に予定する次戦で、1980年10月に具志堅用高が記録したV13に挑戦する。挑戦者探しに苦労した帝拳ジムの本田明彦会長は37年ぶりの快挙に向け、「具志堅の記録に並ぶわけだからいい相手を探す」と明言、WBC2位で22戦全勝16KOのネリー(メキシコ)、元WBAスーパー王者パヤノ(ドミニカ共和国)とウォーレン(米国)らを候補に挙げた。「あと3年も4年もできるわけじゃない。残りのボクシング人生を考えると後悔したくない」と話す山中が望むのも記録より強い相手。観客も自身も満足する濃厚なファイトだ。

 ◆山中 慎介(やまなか・しんすけ)1982年(昭57)10月11日、滋賀県湖南市生まれの34歳。南京都高(現京都広学館高)でボクシングを始め、専大で主将を務めるなどアマ通算34勝(10KO・RSC)13敗。06年1月プロデビュー。10年6月、日本バンタム級王座獲得(防衛1)。11年11月、王座決定戦で11回TKO勝ちしてWBC世界同級王座獲得。昨年9月、11度目の防衛に成功して米専門誌リング認定ベルトを獲得した。身長1メートル70・5、リーチ1メートル77の左ボクサーパンチャー。家族は沙也乃夫人(31)と長男・豪祐くん(4)、長女・梨理乃ちゃん(2)。

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2017年3月3日のニュース