米スポーツ界を襲っている新たな混乱 相次ぐ延期と活動停止 コロナの影響はどこまで続く?

[ 2021年12月22日 12:17 ]

ともに感染防止規定の対象となって戦列を離れたNBAネッツのデュラントとホークスのヤング(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】全米大学フットボールのマイアミ大フロリダは31日にテキサス州エルパソでのボウルゲーム(サンボウル=対ワシントン州立大)に出場するが、決戦まであと10日と迫った21日に活動を停止し、チームの全選手とコーチ陣、スタッフを新型コロナウイルス感染防止規定のプロトコルの対象にした。何人が感染したのか公表されていないが、本番に備えた練習ができない状態となっている。問題はチームだけでなく、サンボウルが開催されるエルパソにもあり、AP通信によれば検査での陽性率が15%にまで上昇したとされている。

 フットボール以上に、現在レギュラーシーズンの真っ只中にいるカレッジのバスケットボールは深刻で、各地で延期となる試合が続出。室内競技でしかも肌を覆う部分が少なく、さらに声を出して身体接触もあるという競技特性の影響もあってプロトコルの対象になる選手はさらに増え続けている。

 北米アイスホッケーリーグ(NHL)は2大会ぶりとなるはずだった冬季五輪への選手派遣を断念。21日時点で50試合が延期となっており、北京五輪のための中断期間だった2月6日から22日に延期となった試合を実施する方針を固めた。しかも本来ならそのあとに予定されている試合も可能な限り“前倒し”で行うことも検討中。感染拡大がさらに深刻になった場合を想定して、やれる間に試合を消化してしまおうという意図が見え隠れしている。

 NBAでも現時点で20チームの計84選手が離脱中。東地区全体首位のネッツにいたってはケビン・デュラント(33)やジェームズ・ハーデン(32)といった主力を含む10人がプロトコルの対象となった。今季の得点部門でデュラントに次いで2位となっているホークスのトレイ・ヤング(23)も離脱。アダム・シルバー・コミッショナー(59)は2019年のようにシーズンを中断することはしないと言明しているが、それは感染がこれ以上、広がらないことが前提だろう。

 NFLではレギュラーシーズンの第15週を迎えてブラウンズなどでクラスターが発生。プレーオフ進出がかかっている大事な試合に主力選手が出場できない事態と直面している。

 21日には米ペンシルベニア州フィラデルフィアで2日延期となっていたイーグルス対ワシントン(旧レッドスキンズ)の試合が行われたが、選手20人とアシスタントコーチ7人のプロトコル対象者を出していたワシントンでは、今季全13試合に先発していたテイラー・ハイニキー(28)を含む2人のQBが離脱。プレーオフ進出には白星が必要という大事な試合で先発したのは21日に契約したばかりのギャレット・ギルバート(30)で、試合は17―27で敗れて6勝8敗となってしまった。

 ただしこれだけ各スポーツ界で多くの感染者が出ていながら、過去2年間のように重症化した選手は今のところほとんどいない。そこがこれまでと違いだが、見方を変えるとそれは7割ほどに置き換わったとされるオミクロン変異株の生存戦略のようにも感じられる。死に至ることはなく、無症状で動ける感染者が多ければそれだけ数は増えていく。人間の油断を誘い、宿主の命と行動範囲を奪うことなく世の中に広がっているのだとすれば、まさに“知能犯”のようなウイルスだ。

 2月には北米プロスポーツのビッグ・イベントが目白押し。5日にNHLのオールスターゲーム(ネバダ州ラスベガス)、6日にNFLスーパーボウル(カリフォルニア州イングルウッド)、そして20日にはNBAのオールスターゲーム(イリノイ州シカゴ)で開催される。しかしスポーツ・イベントに限ったことではないが、オミクロン株の感染が広がった国では再び「制限」か「自由」かの選択を迫られている。

 地球温暖化と一部地域での深刻な人権問題…。もしコロナの感染拡大がなければ、クリスマスの前に無事解決を祈るべき話題はこの2つだったかと思う。

 今年の8月14日。PCR検査で陰性という結果を受け取ったあとに新型コロナウイルスの1回目の接種を終えた私は、接種から18時間後に帯状疱疹を発症。その後3週間にわたって肋骨周辺に激痛が走り、免疫力を活性化させるためにワクチンを接種したというのに、免疫が低下して抗ウイルス剤と鎮痛剤を服用するという矛盾する?治療が始まった(もちろん自費)。帯状疱疹を経験するのは52年ぶり。偶然とはとても思えない。仕事上、調べることが“日常”のようなものなので自分で米国の副作用の実態の有無を探してみると、その時点でリウマチの患者では接種した人の1・2%が帯状疱疹を発症したと報告している医学系サイトを発見。しかし厚生労働省に問い合わせてみると、コロナのワクチン接種に関して帯状疱疹の副作用の報告は聞いたことがないと言われた。

 ようやく10月以降になってワクチン接種後、もしくはコロナ渦の中で帯状疱疹を発症する人が増えていることが報じられるようになったが(それでも副作用とは認められていない)、私の場合は時期が早すぎた?ようだ。結局、その2週間後に予定されていた2回目の接種は断念。そして現在に至っている。

 当局から見れば私は例外中の例外で帯状疱疹の発症は単なる偶然なのだろう。しかし私のような事例を持つ人はどこかで見落とされてはいないか?その疑問が解消されない限り、私にとって3回目のブースター接種は遠い道のりだ。

 まもなく2022年。今年もまた振り返るのが辛い1年になったが、新たな年はそうでないことを祈っている。一歩でもいいから前に進んでほしい。そのために感染防止には十分気を使わなくてはいけない。スポーツの記事を書き始めてまもなく40年目に突入。コロナの感染防止に努めているすべての医療従事者に敬意を表し、私は私なりにコロナと戦っていこうと思う。読者の皆さんの健康をも祈りながら…。ではよいクリスマスを。そしてよいお年を。

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。

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