パラ競泳・富田宇宙 初出場32歳で銀メダル 残り100メートル粘り「死ぬかと」最後は気持ち

[ 2021年8月27日 05:30 ]

東京パラリンピック第3日 競泳男子400m自由形(視覚障がいS11) ( 2021年8月26日    東京アクアティクスセンター )

表彰式で銀メダルを手にする富田(撮影・坂田 高浩)
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 声が震えた。首に銀メダルを下げた富田は「たくさんの人に支えられ、皆さんからメダルというプレゼントを頂いたという気持ちでいっぱい」と語った。

 出し切った。「後半の粘りには自信があった」と前半から飛ばして200メートルのラップで2位に上がると、そのままキープ。「最後の100メートルは死ぬかと」と振り返ったが、強い気持ちで乗り切った。

 名前の通り宇宙飛行士を目指し、熊本屈指の名門・済々黌高に進学したが、2年から視力が低下した。夢を諦めて一時は水泳とも離れたが、就職後に全盲の世界で競技を再開。SNSで共生社会への思いなどを発信する。

 24日の開会式では介助なしで大会旗を運んだ。「他のアスリートと協力することで介助なしで歩けるんだよ、ってメッセージを込めた」。そしてこの日の銀メダル。

 「一生に一度の大舞台で、多様性の価値とか障がい者の理解につながるようなパフォーマンスとしてメダルを獲る姿を見せられた。障がいを負った意味が、この瞬間にあったのかな」。そんな思いをかみしめた。

 ◆富田 宇宙(とみた・うちゅう)1989年(平元)2月28日生まれ、熊本県出身の32歳。熊本・済々黌高2年時に進行性の網膜色素変性症と診断され、現在は全盲。日大では競技ダンス部に所属し、全日本学生選抜選手権にも出場。就職後、23歳から視覚障がい競泳に取り組み、パラリンピックはリオ大会代表選考で落選しており、今回が初出場。1メートル68、62キロ。

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