橋本会長、尾身氏の「無観客五輪」提言を黙殺 政府の方針優先、21日「最大1万人」正式決定へ

[ 2021年6月19日 05:30 ]

記者会見する東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長
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 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)は18日、大会の観客数上限について「定員の50%、最大1万人」との政府方針に準じて決める意向を改めて示した。同日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(72)らから「無観客が望ましい」などの提言を受け取り、理解を示しながらも、無観客の部分は“スルー”。観客数は21日に国際オリンピック委員会(IOC)などと開く5者協議で正式決定される。

 橋本会長はこの日午前、尾身会長から開催に伴う感染拡大リスクに関する提言を受け取り、コロナ対策を協議した。提言には最初に「無観客開催は会場内の感染拡大リスクが最も低く、望ましい」とあり、有観客なら「現在の大規模イベントの基準よりも厳しく制限すべき」「感染拡大の予兆がある場合は無観客に変更」などと記されていた。だが、橋本会長は「政府が示す基準にのっとって決定したいとの思いに変わりはない」と言い切った。

 尾身会長との協議では無観客を提言されながらも、「一方で観客を入れた場合の提案も示していただいた」部分を何度も強調。組織委が講じてきたコロナ対策が高い評価を得たとし、「会場内の感染リスクは抑えられるだろう、と理解していただいた」と明かした。夜に開いた記者会見では「無観客の方がリスクはないのに有観客にするメリットは?」と突っ込まれたが、「リスクの払しょくを最後まで探るのが組織委の仕事。他のスポーツと同様に観客に見てもらいたい」と有観客への強い意欲を表明。大会関係者削減やワクチン接種の取り組み、組織委のコロナ対策専門家会議による人出抑制シミュレートなどの数字を挙げ、「安全、安心に開催できるエビデンス(根拠)がそろってきた」とも主張した。

 専門家会議では、観客数決定後も「状況に柔軟に対応することが重要」とし、大会途中での上限変更も必要になると指摘。橋本会長も、感染状況が悪化した場合には「無観客も覚悟しなくてはいけない」と口にした。しかし、政府の方針に従う原則は揺るがない。

 観客数は組織委、政府、東京都、IOC、国際パラリンピック委員会(IPC)による21日の5者協議で決定する。橋本会長は「もっと早く発表したかったが、ここまで延ばすことになった。チケットもあるので、ここで決定しないと多くの方々に迷惑を掛ける。最終決断の時」と話して唇を結んだ。

 ≪サミット発言で当初の文言骨抜きに≫尾身氏は提言を作る過程で「当初、東京五輪開催の有無を含め検討してほしいという文言があった」とも話した。菅義偉首相が先進7カ国首脳会議(G7サミット)で開催を表明したため、「開催有無は意味がなくなった」と削除したという。ある専門家は「分科会で提言を出させないような圧力が政府側からあった」と語るなど専門家側の動きは封じられ、提言は「骨抜き」となった。

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