八百長よりも夏場所?理事会も調査委も「開催ありき」

[ 2011年2月23日 06:00 ]

記者会見に臨む、日本相撲協会の放駒理事長(右)と特別調査委員会の伊藤滋座長

 大相撲の八百長問題の全容解明を目指す特別調査委員会は22日、東京・両国国技館で開かれた相撲協会の理事会で、関与の疑いがかけられている14人が正直に関与などを申告すれば処分の軽減を考慮することを提案し、承認された。幅広い情報提供を求めるのが狙いだが、放駒理事長(元大関・魁傑)も一転して“夏場所(5月8日初日、両国国技館)ありき”を示唆。徹底究明を諦めたような発言に終始した。

 特別調査委員会の“迷走”はこの日も止まらなかった。理事会では、23日から関与を疑われている14人を対象に行う面談調査で、正直に関与を申告した者には情報提供と引き換えに処分の軽減を考慮したいと提案した。だが、関係者によると「厳罰を逃れるため力士が虚偽の証言をしたら大混乱する」との懸念が相次いだという。「爆弾を持たせるようなもの」という猛反対も出た。

 これに対し、放駒理事長は「皆さんも夏場所はやりたい気持ちではないか?解決のためには協力してほしい」と説得。外部理事である伊藤座長も、3月中旬までに区切りをつければ5月の夏場所開催に間に合うと述べると流れは変わったという。さらに同委員会は、理事会が必要とあれば処分を提言する用意をするとの意向も通達した。

 伊藤座長は「情報を多方面から取らなきゃいけない状況に追い込まれている」と説明するが、内部告発を期待した「ホットライン」開設でも十分な情報を得られない中、正直に申告する力士は皆無に等しいと言わざるを得ない。昨夏の野球賭博問題では、上申書で正直に申告すれば厳重注意にとどめると通達しながら、実際は解雇、けん責などの処分が下された。力士らは情状酌量をちらつかせる手法に不信感を抱いており、疑惑をかけられているある力士も「裏付けをするとはいえ関係ない人が犠牲になる可能性もある。とんでもない話」と不満を漏らした。

 放駒理事長は当初、「全容解明がない限り本場所開催はできない」と明言した。ところが、一転して夏場所ありきで調査を進め、早期解決を目指すことになった。閉塞(へいそく)状態に陥る特別調査委の苦肉の策に夏場所ありきの思惑が絡んでいるようでは、世間の納得を得ることはできない。それどころか批判が出るのは必至。相撲協会は徹底究明とはかけ離れた方向に動きだした。

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2011年2月23日のニュース