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【コラム】金子達仁

バルサは今後どうなっていくのか
ポゼッション・サッカーの行く末は?

[ 2017年12月30日 06:00 ]

バルセロナ(スペイン)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、マンチェスター・シティー(イングランド)と、率いたチーム全てでポゼッション・サッカーにこだわり、結果を出し続けているグアルディオラ監督
Photo By AP

 なぜクライフは、グアルディオラはポゼッション・サッカーにこだわるのか。理由はもちろんひとつではないが、中でも最大なものをあげるとしたら、「それが勝つためにもっとも効果的な手段と考えるから」だろう。17年現在、世界で一番背が高いのは中国・河北省にお住まいの鮑喜順さんだそうだが、もし身長2メートル36のこの方が俊敏性を兼ね備えたストライカーだったとしたら、おそらくはクライフであってもハイクロスを多用するはずだ。

 ご存じの方も多いだろうが、先週末、スペインではレアル・マドリード対バルセロナのいわゆる“クラシコ”があった。結果は3―0でアウェーのバルサが勝利。マドリード・ファンには暗黒のクリスマスとなった。

 だが、長年バルサを見てきたファンの中には、結果とは関係なく、愕然(がくぜん)とした人もいたに違いない。ポゼッション・サッカーという概念を世界中に広げた総本山が、四半世紀以上貫いてきた信念を放棄したことを全世界に発信したに等しい内容だったからである。

 この日のバルサはボールを狩りにいかなかった。ダイレクト・パスもほとんどなかった。彼らはガッチリと守り、抜け目のないカウンターに勝機を見いだそうとし、まんまとそれに成功した。

 当然である。バルサには、メッシがいるのだから。

 思えば、グアルディオラ時代の美しいバルサにおいて、メッシはあくまでもワン・オブ・ゼムだった。素晴らしい才能の持ち主であることは明らかだったが、与えられた役割の大きさはシャビやイニエスタと変わらなかった。

 だが、シャビやイニエスタと違い、メッシはアルゼンチン人だった。ただ自分らしくあればよかったスペイン人ではなく、マラドーナの後継者たることを期待されてしまうアルゼンチン人だった。

 するとどうなったか。シャビはいつまでもシャビのままだったが、メッシはどんどんと怪物化していった。ヘディングシュートが増え、右足での得点が増え、冗談のような数のゴールを量産するようになった。ポゼッションは確かに効果的な戦術だったが、それ以上に簡潔で効果的な、メッションとも言うべき武器が生まれてしまったのである。

 何たる皮肉。

 バルセロナで育ち、バルセロナのサッカーに染まったからこそ、メッシは世界に飛躍することができた。アルゼンチン代表での彼が不思議なぐらい輝きを放てなかったのは、志向するサッカーがあまりに違っていたからだった。

 だが、国民の期待に応えようとしたメッシの努力は、彼を生み出したポゼッション・サッカーに引導を渡すことになった。バルサとアルゼンチン代表のサッカーはかけ離れたものではなくなり、ついにメッシはアルゼンチンの英雄となった。

 メッシは、バルサは今後どうなっていくのか。ポゼッション・サッカーの行く末は?18年は、ターニングポイントの一年となる。(金子達仁氏=スポーツライター)

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