広瀬が銀!メダル1号 リオ五輪に続いた「柔道ニッポン」復活
リオ・パラリンピック 柔道男子60キロ級決勝(視覚障がい) 広瀬―ナモゾフ(一本勝ち)
(9月9日)
視覚障がい者による柔道で、男子60キロ級の広瀬誠(39=愛知県立名古屋盲学校教)が04年アテネ大会以来3大会ぶり2度目の銀メダルを獲得し、日本選手団メダル1号となった。66キロ級の藤本聡(41=徳島県立徳島視覚支援学校職)は銅メダルを獲得。全7階級でメダルを獲得したリオデジャネイロ五輪の柔道男子に続き「柔道ニッポン」復活を予感させた。
表彰式を終えた広瀬は真っ先にスタンドで観戦した3人の娘たちの元に駆け寄った。子供たちの首に銀メダルをかけ、抱き上げる。
「子供たちにメダルを獲ってきてと言われてました。強いお父さんを見せることができてよかった」
カバンには8月上旬に撮影した柔道着姿の娘3人の写真をしのばせた。毎試合前、控室ではその写真を見て心を落ち着かせた。「お父さん、頑張って」。会場に響く子供たちの声も力になった。初戦は払い巻き込みで逆転の一本勝ち。準決勝も快勝した。決勝では世界ランク1位のナモゾフ(ウズベキスタン)に得意の巴投げから寝技への仕掛けを幾度も試みたが不発。強引な払い巻き込みを返され、2度目の技ありを取られた。「全部出して負けた。これが僕の実力です」。完全燃焼だった。
12年前とメダルの色は同じでも価値が違う。「パラリンピックのステータスが上がり、世界のレベルが上がっている。アテネの時よりも重みがある」。北京大会では7位。減量苦から逃れるため1階級上の66キロで挑んだロンドン大会も5位。何度も「引退」を口にした。再び本来の60キロでの再起を決意し、競技を続けられたのは減量時にタンパク質中心の食事を工夫して作ってくれた里美夫人の存在が大きかった。
「思春期になれば、父親が障がい者だと言われて考えることもあると思う。でも僕は柔道を一生懸命やって日々楽しく生きている。考え方でいかようにも楽しくて充実した人生がある」。伝えたかった思いを表現した広瀬は、表彰台で誇らしげに娘たちとの写真を掲げた。
◆広瀬 誠(ひろせ・まこと)1976年(昭51)11月22日、愛知県生まれの39歳。愛知県立名古屋盲学校勤務。西尾東高で柔道を始め、2年時に視神経の炎症で視界が曇る難病「レーベル遺伝性視神経症」と診断され、視力は0.01まで下がる。1メートル66。家族は里美夫人(35)と優宇ちゃん(6)、巴恵ちゃん(3)、若奈ちゃん(2)。
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