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チベット騒乱で北京五輪ボイコット?

[ 2008年3月15日 06:00 ]

 北京五輪に“黄信号”が点灯した。中国チベット自治区のラサで14日、僧侶を中心とした抗議活動が拡大。警察車両や店舗が燃やされ、戦車が突入する異常事態となった。ラサ市内ではチベット動乱から49年となった10日からデモが発生。チベットと中国は五輪の聖火リレーをめぐっても激しく対立しており、8月8日の五輪開幕に暗い影を落とし始めた。

 血が流れ、銃声が響きわたった。14日にラサ市内をデモ行進していたのは僧侶と住民合わせて約400人。ハンガーストライキに入っていた僧侶2人は、抗議の意をアピールするために自ら手首を切って重体となった。パトカーや道路に駐車してあったバイク、さらには店舗に火が放たれると市内は騒然。AP通信が現地にいる米国人の話として伝えたところによると、警察と軍は群衆に向かって発砲したとされている。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(本部ニューヨーク)は「戒厳令が敷かれたラサ暴動(89年)以来、最大の抗議行動。隣接する青海省にも広がっている」と指摘。米政府系放送局は、デモ隊に警察が発砲、少なくとも2人が死亡したと報じた。

 抗議活動の狙いは、中国政府による弾圧(同政府は否定)からの解放と独立を勝ち取るためだが、チベット民族を蜂起させた一因は五輪の聖火だ。中国政府は聖火リレーのハイライトとして、4月末から5月初旬にかけて世界最高峰のチョモランマ(8848メートル)へのアタックを計画。しかし同民族にとって世界の屋根は“聖地”でもあり、中国政府の方針には断固反対の立場を取っていた。10日には人権保護を訴えるチベット系活動家がギリシャ・オリンピア遺跡で“採火式”を強行。北京五輪組織委員会へ抗議の意思を示すとともに、自らの手でともした火をチョモランマに持ち帰ろうとして話題になった。米サンフランシスコ在住のチベット系住民は「当地での聖火リレーを阻止する」と表明。聖火をめぐるチベット対中国政府の対立図式はグローバルなものになっていた。

 騒動が長期化すれば五輪開幕に影響を及ぼすのは必至。ただでさえ欧米では中国の人権問題に異を唱える動きが強まっており、80年のモスクワ、84年のロサンゼルスの両五輪と同じように各国のボイコットにつながる危険性もある。当初、中国側は沈黙を守っていたが新華社はついに一連の混乱を報道。五輪というスポーツの祭典を目前に控えた中国政府は難しい対応を迫られることになった。

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2008年3月15日のニュース