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尚子すべての人に勇気与える走りを

[ 2008年3月9日 06:00 ]

早朝の練習を終えて笑みを浮かべる高橋尚子

 北京切符ですべての人の心に希望の火をともしたい――。北京五輪女子マラソン最終選考会の名古屋国際女子マラソンは9日、瑞穂陸上競技場発着のコースで行われる。号砲を控えた8日、有力選手が記者会見し、00年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子(35=ファイテン)は、列島に勇気を与えるレースを約束。五輪へのラストチャレンジとなる運命の42・195キロは、12時15分にスタートする。

 無数のフラッシュが、ほおの肉がそげ落ち、極限まで絞られたシドニー女王を浮かび上がらせた。決戦前日の記者会見。400人収容の会場を埋め尽くした報道陣の視線を一身に浴び、高橋がさわやかに決意表明した。
 「私の走りを見て、生活の中で“頑張るぞ”って思いを持ってもらえるようなレースをしたい」
 00年シドニー五輪で世界の頂点に立って以降、う余曲折を経てここまできた。01年ベルリンでの世界記録樹立、アテネ五輪の代表落ち、恩師・小出代表との師弟関係解消、05年東京国際の復活優勝、そして翌年の失速…。そんな経験を重ねるうちに「勝ちたい。タイムを出したい」という欲求は、モチベーションの役割を失った。入れ替わって胸にこみ上げたのは、声援に応えたいという感情だった。
 「挫折してもここまでやってこられた。すべての方々に感謝したい」。その気持ちは、天国にいる恩人にも届ける。01年3月に死去した祖母・高水いね子さんの形見の指輪。03年10月に亡くなるまで主治医として体をケアしてくれた小山由喜氏から「頂いた思い出の品」。この2つをお守りにそっと忍ばせた。
 大一番が06年11月の東京国際以来、約1年4カ月ぶりの実戦。レース勘に不安は残るが、自ら選んだ道だ。座右の銘は「何も咲かない日は下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」。この日を前に「山ほどあったハプニング」を乗り越え、ついにスタートラインに立つ。「今までいろんな花を咲かせてきた。あすは名古屋の色に染まるような花を咲かせたい」。過去2戦2勝の名古屋から北京へ。運命の42・195キロを駆けろ、尚子!

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2008年3月9日のニュース