生みの苦しみ知る鹿戸師にますます期待

[ 2021年11月5日 05:30 ]

<天皇賞・秋>レースを制したエフフォーリアと管理する鹿戸師(右から3人目)ら(撮影・郡司 修)
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 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、東京競馬場ではアルゼンチン共和国杯(G2)が行われる。

 2008年にこのレースを制したのがスクリーンヒーロー。同馬は続くジャパンC(G1)も優勝し、一気にG1ホースになってみせた。

 この馬を管理していたのが、鹿戸雄一調教師。同師は08年3月の開業だから開業年にいきなりG1トレーナーの仲間入りをしたというわけだ。

 ちなみに同師は春にも管理するエフティマイアで桜花賞(G1)とオークス(G1)を2着。いきなりG1戦線で活躍していた。

 これだけを聞くとどれだけ順調な立ち上がりかと思えるが、実は順風満帆だったわけではない。3月2日に初めて競馬場へ送り込んだダイワジーニアスは1番人気に推されたが4着。初出走初勝利こそ逃したものの、翌々週には6番人気馬が2着、さらに翌週は8番人気馬が3着といつでも勝てそうな気配が漂った。しかしその後、人気馬が立て続けに掲示板にも載れないなど、開業2カ月半が過ぎても未勝利。つまり、先述したエフティマイアの桜花賞2着も、厩舎としては未勝利の状態での好走だったのだ。

 そんな鹿戸厩舎だが、5月17日には「チャンスあり」(鹿戸師)と思える馬を東京に連れて行った。スコルピオンキッスというその馬は3番人気に支持された。しかし…。

 「隣枠で落馬があり、カラ馬に邪魔される形になってしまいました」

 結果は2着惜敗。鹿戸師はその時、次のように思ったという。

 「このまま一生勝てないのでは…」

 ところがそのわずか約25分後。新潟で出走したダイワバイロンが6番人気の低評価を覆して優勝。これが厩舎の勝利第1号となると、約半年後には先述したスクリーンヒーローでG1トレーナーに昇華するのだった。

 それから13年後の今年、エフフォーリアで皐月賞(G1)を制すと先週は天皇賞・秋(G1)も優勝してみせた。生みの苦しみを知る調教師のますますの活躍を期待したい。(フリーライター)

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