【日本ダービー】担当ロジャーと一丸 怪物の影で虎視たんたん

[ 2019年5月23日 05:30 ]

元厩務員 田井秀一記者が迫る ホースマンシップ(4)

初G1へ意気込むロジャーバローズと米林助手
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 ホッカイドウ競馬での厩務員経験を買われて任された当連載。東西トレセンにも道営出身者は少なくない。ロジャーバローズを担当する米林昌彦助手もその一人。「懐かしい。毎日、馬と向き合って楽しかったよね」。佐藤邦茂厩舎で約2年間、見習い騎手として調教に騎乗。共通の“故郷”の話に花が咲いた。

 競馬に興味を持ったのは16歳の頃。趣味の読書で草野仁の著書「たかが競馬されど競馬」に巡り合い、乗馬クラブへ通うように。高校卒業後に豪州のQRITC(競馬関係者養成施設)へ留学した。ところが落馬事故で腰椎を骨折。再起が危ぶまれる大ケガだった。「体のバランス感覚がずれてしまって正直、怖かった」。それでも半年間の懸命なリハビリを経て再び馬上へ。道営などで調教技術を磨き、24歳でトレセン入りした。

 読書家で見識が幅広い。数十分の取材の中で最も驚いたのは、馬の体づくりに古武術の考え方を応用しているという話。「人間も馬も動物。体をこう動かすと、この部分にひずみが生まれる…など体の仕組みを考えれば分かることもある。体のケアに生かしています」。負荷がかかった部位を整体すると馬の動きが軽くなるという。馬へのアプローチは無限大だと改めて思い知らされた。

 馬房内でおとなしくたたずむロジャーバローズ。「馬はそうでもなさそうですが人間の方は少し緊張しています」。担当馬がG1に挑むのは今回が初めて。それでも「角居厩舎は担当者だけではなくスタッフが一丸となって馬に携わる。互いにサポートする体制が構築されている」と不安はない。今年のダービーで最も注目を集めるのは僚馬サートゥルナーリア。「厩舎に取材に来てくれる方はほとんどサートゥルのところに行く。あの馬は相当強いですけど、この馬も力はある。“今に見とけよ!”って感じですね」。無敗2冠の偉業を狙う怪物のすぐそばで闘志を燃やしている。

 ◆米林 昌彦(よねばやし・まさひこ)1978年(昭53)9月6日生まれ、北海道出身の40歳。高校卒業後、豪州へ競馬留学。道営・佐藤邦茂厩舎で腕を磨き、24歳でトレセン入り。3厩舎を経て昨年、角居厩舎に移籍。「馬と話す男」と称される世界的調教師モンティ・ロバーツ氏に影響を受け、馬を扱う時はフレンドシップを重視している。思い出の担当馬はトーホウチェイサー。

 ◆田井 秀一(たい・しゅういち)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪府出身の26歳。阪大法学部卒。野球漬けだった高校卒業後に、道営・斉藤正弘厩舎に所属。厩務員として、引退後の98年菊花賞3着馬エモシオンに乗馬したのが自慢。大学時代はラジオNIKKEI第2の「中央競馬実況中継」でアルバイト。スポニチ入社後2年間はスポニチアネックス記者として芸能を中心に取材し、今年4月から中央競馬担当。

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