聞くことで道切り開いたナナちゃん

[ 2019年2月12日 05:30 ]

菜七子G1初騎乗記念連載(番外)

元騎手として菜七子の凄さを語った西原さん
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 「G1に騎乗するのは本当に凄いこと。私には想像もできなかった。ナナちゃん(藤田菜七子)は凄い」

 西原玲奈さんの言葉に力がこもった。JRAの女性騎手として同じ世界でもがき苦しんだ。騎手を引退した今も栗東・梅田厩舎で調教助手として競馬に関わり続けている。そんな彼女だからこそ、今の菜七子の凄さを誰よりも理解し、そして昔の自分に何が足りなかったか、冷静に振り返ることができる。

 00年にJRA6人目の女性騎手としてデビュー。1年目181戦10勝、2年目179戦6勝と出だしは上々も、減量特典がなくなると乗り鞍が激減した。ひたすら調教騎乗に励むも状況は変わらず。3年目は障害レースに初挑戦し落馬。腰椎圧迫骨折など重傷を負い、52戦0勝で初めて未勝利に終わった。ケガから復帰した4年目は8月に佐賀重賞・霧島賞に勝利するも、JRAでは51戦1勝。その後も状況を変えられないまま10年にムチを置いた。

 「女性の成功モデルもなく、何を頑張ればいいのかすら分からなかった。女性は不利だと思った」。現役時代に抱いていたうっ屈とした思い。だが、そんな当時の考えを、菜七子を見て考え直した。「自分にももっとやれたことがあった。今思うのは、デビュー時から先輩に分からないことを積極的に聞くべきだった。トレーニング法や競馬のこと、分からないのが当たり前の時期に聞いておくべき。デビューから何年もたつと聞きづらくなる。ナナちゃんは自分から聞きに行っていて偉いと思う」。

 自分に切り開けなかった道をどんどん開いていく菜七子を、純粋に楽しみに見ている。「以前はレースでナナちゃんがどこにいるか分かったが、今はうまくなってほかの男性騎手と見分けがつかないし追える。フェブラリーSもチャンスのある馬だと思う」

 自身は調教助手になり、11年菊花賞でショウナンマイティとともにG1初挑戦。15年桜花賞ではレッツゴードンキでG1制覇の美酒も味わった。「騎手時代は想像もしなかった、G1に出るような馬に携わることができてありがたい。梅田厩舎でチャンスを頂いている。ちょっとでも自分が力になれるように頑張りたい」。騎手としてできなかったことも、調教助手として今できることも、全てを糧にホースマンとして成長し続けている。

 ◆西原 玲奈(にしはら・れな=現姓前原)1981年(昭56)11月20日生まれ、佐賀県嬉野町(現嬉野市)出身の37歳。JRA競馬学校騎手課程16期生で、00年にJRA6人目の女性騎手としてデビュー。同年3月4日中京2Rで初騎乗(リブレット11着)。同25日中京7RキンザンウイニングでJRA初勝利。10年2月に現役引退後、現在は梅田厩舎で調教助手を務める。16年に結婚。JRA通算590戦17勝。1メートル60、血液型A。趣味は食べ歩きで甘い物から何でも好き。最近おいしかったのは、両親と妹と大阪で食べたカニ。

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