岡部元騎手飼育馬、琉球競馬参戦!道産子「さくら」本土から初

[ 2018年1月12日 05:30 ]

道産子「さくら」の顔を優しくなでる岡部氏
Photo By スポニチ

 元トップジョッキー、岡部幸雄氏(69)らJRA関係者とファミリーホーム(生みの親が育てられない子供を養育する里親家庭)が共同で飼育している道産子(北海道和種)の名牝「さくら」(5歳)が沖縄伝統の琉球競馬に出走することになった。12日、飼育先の茨城県阿見町を出発。21日に沖縄本島へ渡り、2月11日、沖縄こどもの国(沖縄市)で開催される冬季大会に臨む。脚並みの美を競い合う琉球競馬は18世紀に始まったが、本土からの参戦は史上初となる。

 茨城県阿見町内の牧場「ポニーパークあるふぁ」から馬運車、フェリーを乗り継いで沖縄本島まで約2160キロの旅程。本土から琉球競馬に初めて挑戦する道産子さくらは、その才能を見いだした岡部幸雄氏らによって同牧場で1年余の特訓を受けてきた。「東日本大震災後に数奇な運命をたどった道産子だが、その側対歩(右前後肢、左前後肢をほぼ同時に繰り出す走法)は琉球競馬に挑ませたくなるほど美しい」と岡部氏は言う。

 震災の爪痕が残る13年、宮城県石巻市内で生まれたさくらは被災児童の乗馬としてホースセラピー(馬との触れあいによる癒やし)を担う予定だった。だが、急速な過疎化で行き場を失う。JRA元職員の吉成麻子さんが運営するファミリーホーム吉成に引き取られて、16年には同牧場に移動。当時からさくらを見初めていたのが、吉成さんと親交のある岡部氏だった。「生まれながらにして側対歩が上手にできる天才少女。磨けば、琉球競馬の女王になれるかもしれない」

 琉球士族の競技として18世紀に那覇で始まった琉球競馬は側対歩で脚並みの美しさを競い合う、世界に類のない競走スタイルが特徴だ。戦後、開催が途絶えていたが、13年、沖縄こどもの国で70年ぶりに復活。その開催にゲストで騎乗した岡部氏はさくらの琉球競馬参戦を模索し、飼育費と調教を支援する「さくらの会」を結成。田中勝春騎手や馬主の多田信尊氏らJRA関係者、大学の教員、高校の馬術部指導者らもメンバーに加わり、支援を続けてきた。

 沖縄こどもの国(在来動物園)の高田勝園長は「ヤマト(本土)からの出場を大歓迎したい」と語り、さくらの写真入りポスター製作に着手した。吉成さんは「親が育てられない子供たちが暮らすファミリーホームのメンバーにも可愛がられてきたさくらの晴れ舞台。得意の側対歩を生かしてほしい」とエール。騎手は吉成さんの次男で高校3年の篤郎君が務める。

 史上初となる本土からの琉球競馬参戦。数奇な運命をたどった天才ホースが女王の座を懸けて華麗に舞う、真冬の一大イベントになる。

 ◆北海道和種(通称・道産子)とは 日本在来馬8種の1種で、北海道を中心に約1800頭が飼育されている。祖先は岩手の南部駒。体重約350〜400キロ。約60%が側対歩の遺伝子を持っている。

続きを表示

この記事のフォト

2018年1月12日のニュース