【プロキオンS】キャンディ酒井2年ぶり重賞V

[ 2012年7月9日 06:00 ]

<プロキオンS>ゴール前、後続馬を引き離し快勝のトシキャンディ(右)

 中京に舞台を移したダート重賞「第17回プロキオンS」は12番人気トシキャンディが逃げ切って重賞初挑戦V。3連単30万2950円の大波乱となった。

 スタンドからの大歓声が悲鳴交じりの叫びへと変わった。残り200メートル。ハナを切って踏ん張っていたトシキャンディが後続をグッと引き離した。鞍上・酒井は左手のターフビジョンを見やった。「随分(後続と)差があるな。他馬の影がいつまで待っても見えてこないはずだ」。ゴール前、差し、追い込み勢が一斉に脚を伸ばしてきたが、時既に遅し。「しのいでくれ!!」という酒井の心の叫びが届き、12番人気の6歳牝馬は見事に逃げ切った。

 10年小倉記念(ニホンピロレガーロ)以来、約2年ぶりの重賞V。酒井にとって久々のお立ち台だ。今年2月の小倉で落馬。左肩甲骨骨折、左肩鎖関節脱臼で全治3カ月の診断を受けた。馬に乗れない日々。「開き直って」(酒井)肉体改造に取り組んだ。

 股関節の柔軟性を高め、下半身をパワーアップ。体を強化したことで気持ちも安定した。ハクサンムーンでの逃げ切り(出石特別)など自信にあふれた騎乗が見られるようになった。それでも「まだまだ。一瞬の判断をもっと研ぎ澄まさないと。もっとできると思う」と上を目指す姿勢を崩さない。

 こういう前向きさは周囲にも伝わる。騎乗に至った経緯を天間師が明かした。「川田がいない(仏遠征中)し木幡も来られないと言う。なら、(酒井)学がいいなと」。うれしい指名に酒井も「よくぞ見つけてくださいました」と笑顔で応えた。「ちゃんと見ているからな」と天間師。いいやり取りだった。

 次走は交流のサマーチャンピオン(8月15日、佐賀)、クラスターC(8月14日、盛岡)などが候補。重賞初挑戦にして強豪牡馬を退けた逃げは、引き続き脅威となるだろう。熱砂の大波乱劇は、人間味にあふれた、爽やかな風を吹き込んでくれた。

 ◆トシキャンディ 父バブルガムフェロー 母コルチカ(母の父マキアヴェリアン)牝6歳 美浦・天間厩舎所属 馬主・上村叶氏 生産者・北海道浦河町浦河小林牧場 戦績29戦12勝 獲得賞金1億842万8000円。

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