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三菱の新HEVシステム、次期RVR or エクスフォースに積んで日本に導入しませんか? エクスパンダークロスHEV試乗レポート

[ 2024年4月13日 20:00 ]

三菱初のストロングHEVシステム

三菱エクスパンダークロスHEV 全幅はエクスパンダーが1750mm、樹脂製のオーバーフェンダーが装着されたエクスパンダークロスが1790mm

エクスパンダー/エクスパンダークロスのICE搭載車は、インドネシアで生産されるコンパクトMPVだ。全長×全幅×全高4595mm×1790mm×1750mmのボディに3列シートを載せた7人乗りのモデルだ。

三菱がインドネシアで生産するのは、エクスパンダー/エクスパンダークロス、パジェロスポーツ、小型トラックのCOKT L300、ミニキャブEV、そしてデビューしたばかりのエクスフォース(X FORCE)。

タイ工場で生産するのが、トライトン、パジェロスポーツ、アウトランダーPHEV、ミラージュ、アトラージュ(Attrage)、そしてエクスパンダー/エクスパンダークロスのHEVモデルだ。

三菱のラインアップとタイ工場、インドネシア工場の生産モデル

三菱といえば、PHEV(アウトランダー、エクリプスクロス)で、これまでストロングHEVはなかった。今回のエクスパンダー/エクスパンダークロスHEVのHEVは、三菱初のストロングHEVなのだ。

パワートレーンは、アウトランダーPHEVのエンジンを1.6L直4DOHCに換え、フロントモーター、インバーター、ジェネレーターを流用。搭載バッテリーの容量を1.1kWhに減らしてフロントシート下に積む。アウトランダーPHEVにはあるリヤモーターはエクスパンダー/エクスパンダークロスHEVでは取り外されているから、FWDモデルのみの設定だ。

三菱初のストロングHEV 前型アウトランダーPHEVからリヤモーターを外し、エンジンを1.6Lに換え、バッテリーを1.1kWhにした仕様といえばいい。システム的にはシリーズパラレルハイブリッドだ。

「三菱の新HEVシステム、次期RVR or エクスフォースに積んで日本に導入しませんか? エクスパンダークロスHEV試乗レポート」の1枚めの画像
ICE版との価格差は約55万円

ちなみに、リチウムイオンバッテリーはブルーエナジー製でセルを日本から輸入し、それを三菱のタイ工場(ラムチャパン工場)のクリーンルームでパック化される。

ICE版とは別物 これなら日本でも通用する!

今回、エクスパンダークロスHEVを特別に試乗させていただいた。舞台は、バンコクから南東へいったシーラーチャーにある三菱のプルービンググラウンドだ。

ラムチャパン工場からクルマで30分ほど走ったところにある三菱タイランド・プルービンググラウンド。

比較のためにICE版のエクスパンダークロスも用意されていた。ICE版は
4A91型1.5L直4DOHC(105ps/141Nm)+CVTである。

まず乗り込んだのは、HEVモデルだ。

エクスパンダークロスHEVのインテリア。質感は高い。

「三菱の新HEVシステム、次期RVR or エクスフォースに積んで日本に導入しませんか? エクスパンダークロスHEV試乗レポート」の1枚めの画像

外観も内装のクオリティは上々だ。特に内装の質感がいい。

いまどき、タイ生産だからクオリティに問題がある……と思う人はおそらくいないだろう。もちろん、エクスパンダークロスHEVのクオリティも三菱・岡崎工場/水島工場のそれと変わらない。三菱クオリティだ。

装着しているタイヤは205/55R17サイズのブリヂストン・エコピア(タイ生産)。

エクスパンダーHEV(前後にクラディングがない)

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まずはEVモードで走り出す。116ps/255Nmのフロントモーターは力強い。ほぼ満充電の状態で走りだしたが、3km程度はEV走行でこなせる。速度も80-90km/hまでカバーする。やはりモーター駆動は気持ちがいい。

タイでは幹線道路から入って自宅までの距離がほぼ3kmだというから、そこをカバーする航続距離とバッテリー容量なのだろう。もちろん、バッテリーの容量を上げればコストも重量も嵩む。

そして、静かだ。90~100km/hで走行しても風切り音がよく抑えられている。タイのユーザーは、風切り音についてかなりうるさいのだという(風切り音に対する要求が高い)。

脚周りもいい仕上がりだ。ICEモデルに対して車重は50~60kg重くなっているが、それをダンパーの容量アップやブッシュの変更で対応している。テストコース内のさまざまな路面を走ってもバタつかない。HEVはICEモデルに対して重心が10mm下がっていることもハンドリングに好影響を与えているのだろ。

5つのドライブモードが設定される。

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システム的にはホンダのe:HEVの似ている。高速巡航はエンジン+モーターになる

散水車が水を撒いてスリッパリーにしたスキッドパッドを走る。ノーマル/ウェット/グラベル/ターマック/マッドの5つのドライブモードを持つ。三菱得意のAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を使った統合制御は、モードを切り換えると明確にハンドリングが変化する。ターマックモードやグラベルモードでウェットの定常円旋回する際も車体の動きはドライバーの予想を裏切らないから、安心してアクセルを踏み込める。アクセルでクルマの動きをコントロールできるのは楽しいのだ。

ICE版のエクスパンダーHEV

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ICEモデルは、良くも悪しくも普通のコンパクトMPVになる。高速周回路で60km/h→90km/hに加速する際は、1.5L直4エンジンが盛大に音をたてる。トランスミッションはCVTだから、こうなると、いわゆるラバーバンドフィールが顔を出す。車速が上がる前にエンジン回転数ががーんと上がって、うるさい。これはこれで、悪くないのだが、先にHEVモデルに乗ってしまうと、ちょっと(というか、かなり)物足りない。

HEVとICEモデルの価格差は約55万円だから、けっして小さくはない。が、市街走行で約34%、市街地と高速のミックスでは約15%ほどHEVの方が燃費がいい。しかも、タイでは年間の平均走行距離が4-5万kmで、最初の車検まで7年だというから、最初の車検まで(28~35万km走る!)にHEV代を取り戻せるのだろう。ガソリン代だけでなく、乗り味が格段にアップするし、大人数乗車も想定するとHEVを選ぶ人が多くなりそうだ。

エクスパンダー/エクスパンダークロスに初搭載された三菱初のストロングHEVシステム(タイではe:MOTIONと呼ぶ)は、機構的にはホンダのe:HEVと似ている。このシステムはタイだけでなく、ASEAN各地でも人気を呼ぶだろう。ASEANのみならず日本でも通用する実力があると見た。

エクスパンダー/エクスパンダークロスHEVは、そのままでは日本に持ってこられない(衝突安全基準の違いや、積雪地対応なので)が、たとえば、2023年夏にデビューしたエクスフォース(X FORCE 全長×全幅×全高:4390mm×1810mm×1660mm、ホイールベース2650mm)にこのHEVを載せたら、
エクリプスクロス(全長×全幅×全高:4545mm×1805mm×1685mm)
RVR(全長×全幅×全高:4365mm×1810mm×1640mm)
の間を埋めるモデル(というより、RVRの次期モデルでもいい。なにせ現行RVRのデビューは2010年!)として、かなりイケルと思う。

これがX FORCE(エクスフォース)
エクスフォースHEVなら日本でも充分に競争力があると思うのだが。

どうですかね、三菱さん。

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