前田稔輝 伸びしろもパンチも“予測不可能” 日本拳法仕込みの左ストレートでA級昇格決める
日本フェザー級21位・前田稔輝《同級6回戦》大久保海都 ( 2020年11月3日 インテックス大阪 )
新型コロナウイルス感染拡大後、国内で初めての男子世界戦が11月に大阪で行われる。その興業で世界戦直前の出番、セミファイナルを務めるのが前田稔輝(じんき)だ。既に減量を開始し「スパーリングも順調です」。フェザー級(リミット57・1キロ)で普段の体重を63キロでキープしている。もっと軽い階級の世界王者クラスで約10キロの減量に取り組む選手もいることを考えれば、かなり“真面目”なタイプだ。
相手の大久保は1メートル80を超える長身で、1メートル74の自身より6センチ以上高い。それでも体重無差別で争う日本拳法で15年のキャリアを持ち「120~130キロの相手に勝ったこともあります」という前田がこの程度の身長差に臆することはない。「油断さえしなければ」と自信を持ってリングに立つ。今回勝てば6回戦2勝目となり、8回戦以上に出場可能なA級ライセンスを獲得。日本や東洋太平洋、そして世界のタイトル戦への道が開ける。「目の前の試合を一生懸命に頑張るだけ。一戦一戦、同じように気持ちは入っています」と言うものの、これまで以上に気合が入るのは当然だ。
小1から日本拳法を始めた。当時、会社員の父・忠孝さんは「子どもに何か習い事を…」と望んだ。「僕が興味を示したのは近所の体育館でやっていた拳法でした。父は野球をやらせたかったみたいですけど」。父子で同じ格闘技に取り組み、稔輝は早くから才能を開花させた。小学3~6年、中学2~3年と全国優勝。勧誘を受けて進学した大商大堺高(大阪)でも選手権、選抜、総合選手権(高校の部)の高校3冠を達成。大学進学の際は多くの勧誘を受けた中から大商大を選んだ。全国で3本の指に入る強豪であることに加え、学費免除という条件も理由の一つ。既に高3で「(大学)卒業後は格闘技でプロになろうと。大学でタイトルを取ってボクシングに転向するビジョンがありました」。将来を見据えて日本拳法に専念できる環境を重視。無駄に学費を払う必要はないと考え、他の有名私大に興味を示さなかった。大商大では2年時に全日本学生選手権優勝し、主将も務めた。
現所属のグリーンツダジムには、大学生のころからパンチ強化を目的に不定期で通っていた。日本拳法に区切りがついた18年11月に本格的に入門し、卒業後の19年4月に新人王戦でデビュー。同年12月の全日本フェザー級新人王決勝では亀田3兄弟のいとこ、亀田京之介(花形)に判定勝ち、4戦全勝で日本ランキング入りを果たした。もうすぐ入門2年。本石会長は「日本拳法の直線的な動きだけでなく、最近はボクシングらしいサイドの動きも身につけています。本格的にボクシングを始めて、まだ2年。のびしろは大きいですよ。いろんなところに成長のヒントは転がっているので、前田には広い視野を持つように心がけてほしい」と期待を寄せる。父・忠孝さんもトレーナーライセンスを取得し“親子鷹”で世界の頂点を目指す。
新型コロナウイルス感染拡大後、関西初の有観客で実施された今年8月の所属ジム興行(大阪府枚方市)では飯見嵐(ワタナベ)に2回TKOで快勝。17年東日本スーパーバンタム級新人王に対し、左ストレートで3度のダウンを奪った。この得意パンチには日本拳法の経験が生きているという。ストレートは拳を構えた位置から90度ひねり、手の甲が上を向く形で放つのが一般的。前田はこの基本形に加え、縦拳(たてけん、親指が上に来る形のパンチ、左ストレートなら手の甲は自分から見て左側を向く)を織り交ぜる。拳を構えた位置から全くひねらずに放つため、通常のストレートに比べれば肩や上腕などの動きが小さい、いわゆる“ノーモーション”となり、対戦相手にとって見えにくいパンチだ。小1からの格闘技経験で磨かれた当て勘も備え、KOアーティストとなれる資質がある。
「目標は世界チャンピオン。日本や東洋のタイトルに早くチャレンジできるようにランキングを上げたい」
いつ決着するか分からず、まばたきさえ、ためらわれるスリリングな試合は11月3日にゴングを迎える。
◇前田 稔輝(まえだ・じんき)1996年9月25日、大阪府守口市出身の24歳。小1から日本拳法を始め、大学まで全国制覇は通算10度。18年11月にグリーンツダ入門し19年4月デビュー。同年の全日本フェザー級新人王に輝く。1メートル74の左ボクサーファイター。左利きで、箸を使うのも字を書くのも左手。自身と同じ日本拳法経験があるプロボクサーの映像も参考に精進している。
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