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仕事人王者VS20歳スター候補 久々に見応えあった東洋太平洋タイトルマッチ

[ 2017年10月19日 10:30 ]

13日に行われた東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチで丸田を退けた大竹
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 世界挑戦への登竜門となっていたボクシングの東洋太平洋(OPBF)王座の権威低下が叫ばれて久しい。本来なら日本王者から東洋太平洋王者となり、複数回防衛して世界へ実力を蓄えるのが筋だが、OPBF王座を獲得して世界ランクさえ手に入ればいいという安易なマッチメーク→獲得&早期返上&世界戦のパターンが目立つ。日本人同士の対戦も多く「第2の日本タイトルマッチ」と皮肉られてもいる。

 だが、13日に後楽園ホールで行われた東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチは、久しぶりに見応えある日本人対決となった。36歳の王者・大竹秀典(金子)に弱冠20歳の丸田陽七太(森岡)が挑戦。プロ3戦目でWBCユース・バンタム級王座を獲得した関西のホープ、丸田を世界戦コースに乗せるためのマッチマークだったが、大竹は派手さこそないものの“リングの仕事人”と呼ばれる実力者。6戦目での丸田の挑戦は大胆なように思えた。

 試合は案の定、大竹の3―0判定勝ち。1メートル79と長身でリーチもある丸田を序盤から接近戦へ引きずり込み、左ボディーや右ストレートを何度も打ち込んで明確なポイントを稼いだ。誘う動きでガードに隙をつくり、空いた場所を打つベテランらしさも光った。ただ、丸田も追い詰められると必ず打ち返し、頭をつけての打撃戦にも応じるなど、女性100人以上に告白されたというイケメンぶりとは正反対の粘り強さで対抗。最終回には力を振り絞って猛烈な連打を見舞い、大竹をたじろがせた。2回に左拳を痛めて思うような戦いができず、接近戦での対処などキャリアの浅さも露呈したが、将来性を感じさせるファイトに東京のファンも拍手を送った。

 スター候補と期待される丸田が勝っていれば、OPBF王座は早々と返上して世界戦実現へと向かっていたはずだ。それを大竹が阻止し、2014年11月に敵地・英国で当時のWBA同級王者クイッグに判定負けして以来、自身2度目の世界挑戦に望みをつないだ。こちらの世界再挑戦にはタイミングも必要だが、「老かいさにもっと磨きをかけていきたい」との言葉どおり、自身の目標が実現するまでは、手っ取り早く世界を狙おうとする若手の前に立ちはだかり、OPBF王座の権威を守ってほしい。

 芯の強さを感じさせる丸田には、“王道”を歩んで世界王者に上り詰めることを期待したい。この日、テレビのゲスト解説を務めたIBF世界同級王者・岩佐亮佑(セレス)は「うかうかしていられない」と刺激を受けつつも、「日本人が挑戦したいのなら挑戦者決定戦を勝ち上がってきてほしい」と訴えた。岩佐は小国以載(角海老宝石)を倒して世界のベルトを獲得したが、挑戦者決定戦(中止)→指名挑戦権獲得→世界戦という“正規ルート”を歩んだだけに、「世界戦の日本人対決は日本人同士というのが面白いだけ。日本タイトルマッチじゃないんだから」と権威低下の警鐘を鳴らした。スーパーバンタム級は大竹以外にも国内に実力者が多い。サバイバルマッチにタイトルを利用するのなら大歓迎だし、価値も高められるのではないか。(専門委員・中出 健太郎)

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2017年10月19日のニュース