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異常な採点の生まれ方――統一世界ミドル級タイトルマッチ

WBAスーパー・WBC・IBF統一世界ミドル級タイトルマッチで、アルバレス(右)を攻めるゴロフキン (AP)
Photo By AP

 【中出健太郎の血まみれ生活】今年のボクシングのビッグマッチは、ことごとく判定を巡る騒動に見舞われている。3月のローマン・ゴンサレス―シーサケット第1戦、5月の村田諒太―エンダム戦、7月のパッキャオ―ホーン戦。そして、16日に米ラスベガスで行われたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)―サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)のミドル級頂上決戦でも、同じことが繰り返された。

 個人的には、村田戦を除く3試合の判定結果は妥当だと思う。ロマゴンやパッキャオが勝っていたとする米メディアの論調には賛同できないものもある。だが、接戦となった試合でエンダムの5点差勝ちとかホーンの6点差勝ちとした採点が、問題を大きくしている。6点差だと、負けた側は12ラウンドのうち3つしか取っていないことになり、試合内容とかけ離れた印象を受ける。

 三者三様の採点で引き分けたゴロフキン―カネロは、村田が「115―113でカネロの勝ちとしたが、クエスチョンラウンドが多すぎる」と嘆いたように、ジャッジ泣かせの白熱した内容だった。その中で、115―113でゴロフキンの勝利、114―114でドローとした他の2人のジャッジに比べ、118―110でカネロの勝ちとした女性ジャッジ、アデレード・バード氏の採点はやはり異常に映る。ゴロフキンのサンチェス・トレーナーは「もう一度学校で採点の方法を学び直した方がいいのでは」と批判し、カネロ擁するゴールデンボーイ・プロモーションズのデラホーヤCEOも「118―110はショック。私は115―113でカネロ」と話したほどだ。

 バード氏がゴロフキンの10―9とつけたのは4回と7回だけ。ゴロフキンが強烈な右を入れた5回、左でカネロをぐらつかせた8回、ロープに詰めて攻勢をかけた9回も、カネロの10―9としていた。ただ、8回のカネロはロープに詰まってからアッパーを返し、9回も大きな右フックを当てている。常に攻勢だったゴロフキンが実は決定打に欠けており、下がりながらも各ラウンドの途中でクリーンヒットを入れたカネロの攻撃の方が有効と見て、バード氏は“クエスチョンラウンド”を全部カネロに振った可能性が高い。ラウンドごとに必ず優劣をつける採点方式では、各ラウンドの小差が積み重なって思わぬ大差になりがちだ。それにしても、ゴロフキンのプレッシャーに押し込まれていた4〜9回のカネロにポイントを与えすぎだろう。

 バード氏は殿堂入りレフェリーのロバート・バード氏と結婚し、15年間で計442試合のジャッジを務めたベテラン。だが、ベテランになるほど自分の尺度にこだわる傾向があり、他のジャッジとかけ離れた採点をつけるケースも見られる。まして、バード氏は総合格闘技を含めて疑問視された判定が過去に何度もあり、昨年はロマチェンコ―ウォータース戦でジャッジに指名され、プロモーターから抗議を受けたばかり。米ネバダ州コミッションは「ミスはしたが、優秀なジャッジ」と処分しない方針だが、ビッグマッチを任せるにはリスクが大きいと予想される人物を起用したのは明らかに失敗だ。

 関係者によると、ビッグマッチではオフィシャルに通常よりも多い報酬が支払われる。中には赤コーナーと青コーナーをたびたび間違えるベテランもいて、それでもジャッジを引退しないのが分かる好待遇だという。嫌な話だが、今後はその報酬に見合うオフィシャルなのか、監視を強化しないといけないようだ。いずれにしろ、一般の人々も注目する試合で「採点基準が分からない」という声が続出する競技に未来はない。(専門委員)

 ◆中出 健太郎(なかで・けんたろう) 2月に50代へ突入。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上などを担当。判定を巡り騒動となった試合では1999年3月、ニューヨークでホリフィールド―レノックス・ルイスの世界ヘビー級3団体統一戦を取材。リングサイドから離れた席では前に出続けたホリフィールドの優勢に見えたが、映像で確認するとルイスの方がパンチを多く当てており(判定は引き分け)、近くで見なければダメだと痛感した。

[ 2017年9月22日 10:00 ]

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