×

亀海喜寛 最初はあきれた対戦計画 日本人ボクサー史上最高の舞台へ

[ 2017年6月7日 10:30 ]

ミゲル・コットを相手に世界初挑戦が決まった亀海喜寛
Photo By スポニチ

 体重のリミットは154ポンド(69・8キロ)。プロボクシングの17階級で6番目に重いスーパーウエルター級は、かつてジュニアミドル級という名称で国内では通っていた。「炎の男」輪島功一を筆頭に、工藤政志、三原正、石田順裕と過去4人の世界王者がいるが、村田諒太が挑戦したミドル級と同じく、日本人には難関の階級だ。

 国内の選手層が薄いスーパーウエルター級で、米国を主戦場としてきた34歳の亀海喜寛(帝拳)が、日本人ボクサー史上最高の舞台に上がることが決まった。8月26日(日本時間27日)、米カリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターで、元4階級制覇王者のミゲル・コット(プエルトリコ)を相手にWBO世界スーパーウエルター級王座決定戦を行う。亀海にとって世界初挑戦だが、「勝てばタイトルもついてくるんだな、ぐらい」と話すように、現役スター選手のコットとの対戦が実現したことの方が驚きだ。村田が「こんな心躍るカードが決まるなんて、まさに日本人史上最大の試合かもしれません」とフェースブックにつづった言葉が全てを物語る。

 36歳のコットは亀海がプロデビューする前の2004年にスーパーライト級で世界王者になったのを皮切りにウエルター級、スーパーウエルター級、ミドル級とプエルトリコ人初の4階級制覇を達成。対戦相手もマニー・パッキャオ、フロイド・メイウェザー、サウル・アルバレスらそうそうたるメンバーで、パッキャオ戦のファイトマネー1200万ドル(約13億2000万円)が示すようにビッグマッチの常連だった。さすがに衰えは隠せないが、攻防兼備の激しいファイティングスタイル、余計なことは言わずに黙々と戦う姿勢が米東海岸を中心に人気を呼び、将来の殿堂入りも確実視されている。

 日本と東洋で無敵だった亀海は2011年に米国へ初進出。「MAESTRITO(小さな教授)」の愛称が似合うクレバーな戦いぶりから、本場の観客を意識してアグレッシブさを前面に押し出したファイトに転じ、西海岸で認知度を高めていった。2015年には元6階級制覇のオスカー・デラホーヤ氏率いるゴールデンボーイ・プロモーション(GBP)と日本人として初めて契約。激闘の末に引き分けた昨年4月のヘスス・ソト・カラス戦が米国で年間最高試合候補に挙がり、同9月にソト・カラスを再戦で退けると、GBPのマッチメーカーから「コットと交渉するつもり」と告げられたという。亀海自身「何言ってんだ、こいつ。夢見るのも大概にしろ」とあきれたほどの対戦計画だったが、帝拳ジムの本田明彦会長によると、今年2月に契約書にサイン。コットの所属契約問題などで決定が遅れたものの、コットがGBPと契約を結んだことで正式発表に至った。

 残り2試合での現役引退を示唆しているコットは、15年11月にアルバレスに敗れて以来リングから遠ざかっている。GBPが亀海を「再起戦にふさわしいレベルの相手」と想定してコットにぶつけたことは想像に難くない。ただし“かませ犬”と捉えるには、体格で勝り、接近戦ではむしろ有利と思える亀海はやっかいな相手のはずだ。「勝てるイメージを持っている。アップセット(番狂わせ)・オブ・ジ・イヤーを狙いたい」という本人の言葉も決して強がりではない。思えば、あのパッキャオも米国進出当初は“かませ”の立場だった。そして、2008年にデラホーヤを破った一戦は「アップセット・オブ・ジ・イヤー」に選ばれているのだ。(専門委員・中出 健太郎)

続きを表示

この記事のフォト

2017年6月7日のニュース