八重樫 足でV2 “激闘王”が打たせずに“軽量級の英雄”一蹴
プロボクシング WBC世界フライ級タイトルマッチ12回戦 王者・八重樫東 3―0判定 エドガル・ソーサ
(12月6日 東京・両国国技館)
WBC世界フライ級王者の八重樫東(30=大橋)は同級1位の指名挑戦者、エドガル・ソーサ(34=メキシコ)を判定で下し、2度目の防衛に成功した。
足で勝った。八重樫は左回りと右回りを使い分けて相手の打ち気をそらし、出入りのスピードで完全に上回った。ブロックしてはカウンターをヒット。1発打たれれば3発打ち返し、攻防の最後は必ずパンチを入れてポイントを稼いだ。
「選択肢があれしかなかった。もっといけたかもしれないけど、あれでいい。近い距離はそれなりにリスクがあると思って足を使った」。“激闘王”と呼ばれたここ数試合とは違うが、本来のスタイルで最強挑戦者を退けた。
昨年6月の井岡一翔とのミニマム級王座統一戦を前に、土居進フィジカルトレーナーに師事してから約1年半。「毎日つらい」とこぼす厳しいメニューでパワーをつけたが、スタミナの強化にも努めた。8月の初防衛戦は体力を残して試合が終わったこともあり、12ラウンドの間、常に動いて「相手の体力をそぎ落とす」(同トレーナー)戦いを目指してきた。「最後まで足を使えたのは収穫」と八重樫が言えば、大橋秀行会長も「作戦がバッチリはまった。あのソーサが前半のろまに見えた。左ボディーを打たせなかったのが勝因」としてやったりの表情だ。WBCライトフライ級王座を10度防衛した軽量級の英雄に快勝。初防衛戦時は「まだ怖さがある」と話したフライ級で、王者の立場を確立した。
大橋ジムは来年2月に創設20周年パーティーを予定。八重樫は「世界王者として参加できる。今回は勝ちにこだわった」と明かした。9月7日に生まれ、試合後にリングで抱き上げた次女・一永(ひとえ)ちゃんのためにも負けられなかった。3日のIBF・WBA世界スーパーフライ級王座統一戦では“負けても防衛”と試合後に見解が覆るトラブル。業界の信頼回復が懸かった一戦でもあり、大橋会長は「ボクシング好きにはたまらない、玄人受けする試合ができた」と話した。次戦は来年3月か4月。ターゲットの一人は北京ロンドン五輪でフライ級を連覇した鄒志明(ゾウ・シミン)(中国)だ。「チャンスは今しかない」。守るべきものを守った王者は、ビッグネームとの対戦へ攻めて出る姿勢を打ち出した。
▼元WBC世界スーパーライト級王者・浜田剛史 相手が打ち合いに強いことを頭に入れそれを封じた八重樫の頭脳的勝利。4、9、12回のソーサの攻勢は八重樫が打ち合いに応じて打ち負けている。周囲にはもっと打ち合えという声もあったろうが、ここは八重樫の作戦が正解だった。
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