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村田 金王手!日本ボクシング48年ぶり決勝進出

[ 2012年8月11日 06:00 ]

前世界王者アトエフ(左)を相手に大逆転勝利の村田

 ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級(75キロ)準決勝が10日に行われ、村田諒太(26=東洋大職)が前世界王者アトエフ(ウズベキスタン)に13―12で判定勝ちし、銀メダル以上を確定させた。日本選手の決勝進出は64年東京五輪バンタム級で金メダルを獲得した桜井孝雄以来、48年ぶり。11日(日本時間12日午前5時45分)の決勝でE・ファルカン(ブラジル)と対戦する。

 5―8で迎えた最終3回、村田が前世界王者をロープに追い詰めた。初回から攻めたボディーのダメージが、アトエフのスタミナを削る。最終回は相手ホールドによる2点減点を含む8―4と一方的に攻め、1点差の逆転勝ちを収めた。

 「やっと目標の位置にきた。最終回は取っていたし、向こうの減点もあったので、勝ったと思った」。初回、本来のスタイルを捨てて前に出たアトエフに1―4とリードを許した。「面食らった」というが、闘志は失わなかった。

 07年にライトヘビー級(81キロ)、09年にミドル級で世界選手権を制したアトエフは、村田の躍進のきっかけだ。昨年の世界選手権1回戦でRSC(レフェリーストップコンテスト)勝ちして3連覇を阻止。その勢いで、世界選手権日本初の銀メダルを手にした。その前王者がプライドを捨てて「対策をしてきた」が、雪辱は許さなかった。

 世界の層が厚いミドル級は、日本人は出場すら難しいと言われてきた。村田もそう思っていた一人だった。08年北京五輪の出場権が懸かった07年の世界選手権。あと1勝で五輪出場を逃し、翌年の五輪予選も敗退して引退した。「ミドル級では世界で勝てない」と自分に言い訳した。

 しかし、09年に復帰するとグチすら言わなくなった。東洋大職員として妻子を養い、空いた時間に練習。「社会に出て何もできない自分に気付いた」と同時に「ボクシングができるありがたさ」をかみしめた。「ボディーがなかなか決まらなかったけど最後に生きた」。準々決勝同様、リードされても、最後まで粘り強く戦う男になった。

 日本唯一の金メダリスト、桜井氏が昨年1月に他界した。「もう歴史上の人と感じる」というほど、偉業は遠い記憶となったが、48年後の五輪の舞台に立った村田は、静かにこう思ってロンドンに乗り込んだ。

 「あれから半世紀近くたち、ここで金メダルを獲るのは自分の義務ではないかと思う」

 ◆村田 諒太(むらた・りょうた)1986年(昭61)1月12日、奈良市生まれの26歳。中1年時にボクシングを始める。南京都高では高校5冠。全日本優勝5度など計13冠。136戦117勝88RSC19敗。1メートル82。

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2012年8月11日のニュース