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粟生、不完全燃焼…苦戦判定V2に「申し訳ない」

[ 2011年11月7日 06:00 ]

2-1の判定で防衛した粟生は渋い表情

WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 粟生VSボスキエロ

(11月6日 東京・代々木第2体育館)
 粟生が辛くも防衛に成功した。王者・粟生隆寛(27、帝拳)は、挑戦者デビス・ボスキエロ(30、イタリア)に苦戦しながらも2―1で判定勝ち、2度目の防衛を果たした。「攻防一体」をテーマに掲げ、新たなスタイルで臨んだが、理想のボクシングからは程遠い内容となった。指名挑戦者を迎える次戦での巻き返しを誓った。

 不完全燃焼だった。リング上で判定勝利のコールを聞いても、粟生は敗者のように頭を下げた。世界戦で初のメーンイベント。「せっかくこういう機会をいただいたのに申し訳ない。山中さんがいい流れで、つないでくれたのに」。12回を戦い抜き、死守した緑のベルトには、最後まで触れようとしなかった。

 世界戦で初めてKO勝利を飾った今年4月の初防衛戦に続く快勝を狙う粟生は、これまでの左カウンター主体の“待ち”のボクシングからスタイルを変えて臨んだ。「攻防一体」をテーマに掲げて距離を詰め、ガードの高いボスキエロに左右の強打と右ボディーで攻めた。だが、さらに間合いを詰められ、相手の有利な距離に持ち込まれて主導権を握れなかった。「研究されていた」。3回終了後には首をかしげてコーナーに戻った。

 中盤からは徹底してボディーを攻めたものの、パターンが少なく打開策とはならない。「効かないよ」とばかりに挑戦者から挑発される場面もあった。接近戦が不発に終わったばかりか、最大の武器であるカウンターまで消えた。「(8回の公開採点では)競っていたので明確にポイントを取りにいった」が、その後も有効打はなかった。帝拳ジムの本田明彦会長は「実はきのうも食べられてない。控室でも全然動けてなかった」と減量の影響を指摘した。

 発展途上の王者は「もうこんなことがないようにしたい、次は成長した姿を見せます」と猛省。巻き返しを誓った。本田会長によれば、3度目の防衛戦は来年3月に同級2位ターサク・ジャンダエン(タイ)と指名試合を行う方向。「唯一勝てたことが良かった。何とか次につなげた」と初めて笑顔を見せた粟生。次戦こそは「攻防一体」の新スタイルを完成させて、誰もが納得する形でベルトを守る。その決意は固くなった。

 ▼浜田剛史氏(元WBC世界スーパーライト級王者) 粟生は大苦戦だった。技術戦を予想していたところ、相手が攻撃を仕掛け、それにパワーがあったことが粟生を消耗させ、終盤の9回以降、劣勢を強いられた。ボスキエロは左対策をよく研究していた。

 ◆粟生 隆寛(あおう・たかひろ)1984年(昭59)4月6日、千葉県市原市生まれの27歳。父・広幸さんの影響で3歳からボクシングを始める。習志野高時代に史上初の高校6冠(選抜大会、高校総体、国体を連覇)を達成。アマ戦績は79戦76勝(27KO・RSC)03年9月プロデビュー。09年3月にWBC世界フェザー級王座を獲得。10年11月にWBC世界スーパーフェザー級王座を獲得し2階級制覇。1メートル70、左ボクサーファイター。独身。

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