元ホークス　“リストラの星”宮地克彦氏　鷹にも女子チームを　九州ハニーズ監督兼社長

選手とともにガッツポーズする宮地監督（左から3人目）
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　ホークスOBの今を伝える連載「あの人に逢鷹」。第2回は女子硬式野球部、九州ハニーズの宮地克彦監督（52）を取り上げる。西武から移籍した2年目の05年にプロ16年目で初めて規定打席に到達し、ベストナインに輝いた「リストラの星」は、女子野球の世界で奮闘している。（杉浦　友樹）

　現役通算316安打を放つなどシュアな打撃を武器に西武、ダイエー、独立リーグの富山でプレーした宮地監督は19年から女子野球の世界に飛び込んだ。昨年からは九州ハニーズの監督兼社長として活動。8月の「全日本女子硬式クラブ選手権」ではヤクルトの川端を兄に持つ川端友紀、楢岡、小島と女子野球日本代表3人らを擁して4強入り。もちろん悔しさはあるが、「よくあそこまで戦ってくれた」と話す表情には充実感がにじむ。

　プロのキャリアは実は投手としてだった。春夏2度甲子園に出場した尽誠学園から西武に入団した。「フォーム的には和田（ソフトバンク）そっくりです」と球速ではなく切れで勝負するタイプだった。高卒ルーキーで開幕1軍に抜てきされたが、結果を残せず3年目のオフに肩の強さなどを評価されて打者に転向。02年に100試合に出場するなどブレークしたが、翌年はけがに泣かされ戦力外通告を受ける。

　03年オフに入団テストに合格してダイエーに移籍。「1年間は没頭させてくれ」と家族に伝え単身で福岡に乗り込んだ。初年度から打率・310をマーク。「自分でも奇跡」と振り返る05年は自己最多の125試合に出場。プロ16年目にして初となるオールスターゲームに出場し、初の規定打席に到達。ベストナインにも選ばれ“リストラの星”と呼ばれた。「若い人たちより、中年層のサラリーマンの方からの茶封筒に入ったファンレターが多かった」と笑みを浮かべる。

　その後は富山の選手兼コーチとしてプレーし、現役引退。ソフトバンクや西武のコーチとして中村晃、今宮（ソフトバンク）や秋山（広島）らを指導した。今季からは女子野球の指導と合わせて社会人野球のKMGホールディングスでもコーチとして指導にあたるなど充実の日々を送っている。

　九州ハニーズの監督としては女子野球の変化を感じ取っている。今夏にチームは高校生、大学生向けのトライアウトを実施し、全国から15人が集まって数人に内定を出したという。「少しずつ認知度も上がってきて、女子野球の人口が増えてきて、盛り上がっているのを知ってもらえてきている」と話す。

　だからこそ、高校より上のカテゴリーを強固にしたい思いがある。「全日本女子硬式クラブ選手権」の上位に残ったのはハニーズ以外は阪神、巨人、西武とNPB球団の女子チームだった。現在はその3球団のみだけに「12球団に女子チームができるのが一番夢があると思う」と話す。ソフトバンクのOBとして九州ハニーズの選手にユニホームを着させたい思いがある。「昔はハニーズっていう名前でやってたんだよ、というのが5年後ぐらいに言えるようになれば」と熱い未来図を描いている。

　◇宮地　克彦（みやじ・かつひこ）1971年（昭46）8月28日生まれ、大阪府出身の52歳。尽誠学園では2度甲子園に出場。89年ドラフト4位で西武に入団。04年にダイエー（ソフトバンク）に移籍。07年に独立リーグの富山に移籍し、同年限りで引退。NPBでは457試合に出場し、打率・275、12本塁打、111打点。引退後はソフトバンク、西武、独立リーグの栃木でコーチを務める。19年からエイジェックの女子硬式野球部でGMやコーチ。昨年から現職。右投げ左打ち。

　○…宮地監督のダイエー入団には裏話がある。03年に西武から戦力外通告を受け、ダイエーと横浜（現DeNA）は同日に入団テストを実施。「（この年の）最下位の横浜の方がチャンス」と横浜を選択するも不合格。結果的には、その直後に村松有人のFA宣言を受け、外野手の緊急補強に乗り出したダイエーへのテスト入団で移籍が決まったものの、当初、横浜でなくダイエー選択なら「多分、僕は落ちていたと思う。すごい不思議なんですけどね」と、強運ぶりを懐かしんだ。

　○…宮地監督は選手には「宮地さん」と呼ばせている。投手としてタレントして活躍している上杉あずさ（33）は「距離感を遠くしない、親しみのためのようです」と明かす。選手とは積極的にコミュニケーションを取る。「宮地さんが選手をいじったりもするけど、かえっていじられたりしてますね」と笑みを浮かべる。練習中は「みっともないプレーはするな」「執念見せろ」と鼓舞するなど、メリハリをつけている。