最強の中日ブルペンを支える小さなファイター山本拓実

[ 2022年4月25日 07:30 ]

24日の巨人戦に2番手で力投する中日・山本(撮影・椎名 航)
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 開幕から22試合を消化して中日は12勝10敗の3位につけている。健闘するチームの原動力となっているのは、立浪監督が「どこにも負けていない」と自信を見せる強力なリリーフ陣。中でも成長著しいのが高卒5年目の山本拓実投手(22)だ。

 ここまで3試合連続のイニングまたぎをこなすなど6試合に登板し、1勝0敗、防御率1・23。24日の巨人戦(バンテリンドーム)では5点差を追いついた直後の登板で3者連続三振を奪うなど2回を完ぺきに抑える快投でチームの逆転勝利を呼び込んだ。

 中日担当になる前から山本に注目していた。市西宮高時代から変わらない魅力は、どんな強打者でも逃げずに真っ向勝負を挑む投げっぷりの良さ。だが、9試合の登板で防御率6・43と伸び悩んだ昨年は自信をなくしているように見えた。本人も精神的にかなり落ち込んだという。

 「3年目までは結果が出ようと出まいと自分にチャンスがあった。でも、去年は1軍でも2軍でも登板数が減った。与えられる立場でなくなった中で、自分の特徴は何だろうと常に考えていた」

 自分を見失い、心が折れそうになった時、救ってくれたのは高校の同級生だった。キャプテンだった中野拓土さん、バッテリーを組んでいた飯田竜也さんに連絡し「俺ってどんな投手やったっけ」と訪ねた。答えは二人とも同じ。「絶対に逃げない。打者に向かっていく投手」。これで迷いはなくなった。

 今季から就任したブルペン担当の大塚晶文投手コーチの存在も大きい。先発が早い回で降板した際のセカンドスターター的な役目もこなす山本は、初回からブルペン待機することが多く、同コーチと二人きりの時間が多い。その際に日米通算176セーブの名ストッパーに様々な質問をぶつけて参考にしている。ここでも一番、心に響いたのは「マウンドで一番大事なのは強い気持ち。打者に向かっていけ」という言葉だった。

 35年前、1メートル73と小柄な立浪監督がPL学園から中日入りする際に「男の大小っていうのは、体が大きいとか小さいじゃなくて、肝っ玉で決まる」と言い放ったのは当時の星野仙一監督。生きていれば闘将も好んだであろう1メートル67の小さなファイター。“けんか上等”の強気の投球スタイルで強敵をなぎ倒し、大きな自信をつかむシーズンにしてもらいたい。(記者コラム・中澤 智晴)

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