プロ野球史上初 地震で楽天―巨人戦中止

[ 2008年6月15日 06:00 ]

<楽天・巨人>中止が決まる前に巨人・原監督(左)が楽天・野村監督のもとにあいさつに訪れる

 14日午前に岩手県南部を震源とする強い地震があり、岩手県奥州市と宮城県栗原市で震度6強を観測した。気象庁は「岩手・宮城内陸地震」と命名。死者6人、行方不明11人、190人以上が重軽傷を負う大惨事となった。この地震の影響で、Kスタ宮城で午後2時から行われる予定だった交流戦・楽天―巨人3回戦が中止となった。地震による中止は日本プロ野球史上初めて。代替試合は16日午後6時から同球場で行われる。

 軽妙な野村監督のボヤキも時間の経過とともに消えた。地震の被害拡大が判明するにつれ、慎重な言い回しになり、試合の中止決定とともに、言葉を失ってしまった。
 午前8時43分。野村監督は定宿にしている仙台市内のホテルの高層階にある自室で就寝中だった。球場入りする際には「モーニングコールいらずだったわい。あんなのは初めて」と強烈な揺れを振り返った。この時点では「楽天にも“激震”が走ればいいがな」と独特の表現で3連敗中の打撃陣の奮起を促していた。
 球場のある仙台市宮城野区では震度5強を観測。しかし、耐震構造の球場施設は被害はほとんどなく、VIPルームのガラスのコップが割れたぐらい。実際、試合前練習も時間通りに行われ、野村監督もベンチに腰を下ろし、記者と懇談するいつもの光景が見られた。
 球団側も試合開催に向け準備を進めた。交通機関の乱れを理由に、午前11時50分には1時間遅れの午後3時に試合を遅らせると発表。しかし、深刻な被害状況が次々と報告されると、午後1時の開門直前の午後0時50分に中止を決めた。いったん試合開催を決めたことについて、堀江隆治球場長(39)は「中止、開催の2つの選択肢の中で揺れていました。だが交通機関の運行にメドが立たず、被害も拡大した。安全面に配慮し、開催は難しいと決断しました」と説明した。
 巨人相手の土曜日のデーゲームとあって、入場券は完売。2500人の観客が開門を待ち、突然の中止決定に「5時間かけてやってきた。いったん開催と決めて、なぜ中止にするんだ」と警備員に詰め寄るファンもいた。この日の入場料収入は約6000万円が見込まれており、グッズ売り上げ、飲食、テレビ放映料を合わせると約1億円が消えたことになるが、深刻な被害状況を考えれば、選手も野球どころではない。阪神時代に阪神大震災を経験した高波は「今回開催したらひんしゅくもの」と話した。
 15日は午後1時開始の予定だが、球団は交通機関の復旧具合などを考慮して判断するという。「余震も心配だし、死者が出たのでは仕方ない」。野村監督は神妙な表情で球場を後にした。

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2008年6月15日のニュース