陸上短距離・坂井隆一郎の“逆転”の発想 課題克服のため「長所伸ばしたい」

[ 2023年3月1日 08:00 ]

昨年の陸上・世界選手権男子100メートルで力走す坂井隆一郎

 五輪を目指すアスリートや関係者らを取り上げるコラムの今回は、陸上男子100メートルで昨年の世界選手権に出場した坂井隆一郎(24=大阪ガス)。10秒02をマークして一躍注目を集めたスプリンターは、今年2月に海外の室内レースで2連勝を飾った。新シーズンが本格化する前に思いを聞いた。

 昨季、その名を一気に広めた坂井が順調に調整を重ねている。約1カ月のオフを経て昨年11月に冬季練習を開始。基本の動きを徹底し、1月中旬からスタートやスピード練習を始めた。2月は海外の室内レース3大会に出場し、60メートルで自己記録を更新する6秒62を出すなど2連勝。帰国後に取材に応じ「海外の選手と走って改善するところも分かったし、収穫のあるレースだった」と振り返った。

 最大の武器はピッチ走法を生かした爆発的なスタート。鋭い飛び出しで後続を引き離し、昨年6月の布勢スプリントで10秒02をマークした。同7月の世界選手権では準決勝に進出。大舞台で手応えとともに感じたのが「スタートは通用したけど、中間と後半で差を詰められて、離される。そこが課題」。より進化するために何が必要なのか――。たどり着いた答えが、中間以降の強化ではなく、自身の持ち味に磨きをかけることだった。

 「スタートが得意な選手は“中間以降のスピードが落ちないように”と言われがちだけど、自分は長所を伸ばしたい。スタートに磨きをかけて、その延長線上で中間以降も伸びていければ」。強化ポイントの一つに挙げるのが、最大速度のアップ。鋭いスタートから最も速い状態へスムーズに持っていくことで、中間までに他選手との差を今まで以上に広げる。そのリードがあれば、後半に強い選手でも逃げ切れる。

 今季の目標に世界選手権とアジア大会の出場を掲げ、9秒台、そして来年のパリ五輪を見据える。そのスプリンターをサポートする一人として、今年1月から大阪ガス陸上部の短距離コーチにロンドン五輪男子100メートル代表の江里口匡史さんが就任した。18年7月の現役引退後、エネルギー事業部に勤務し、4年半ぶりにトラックへと戻ってきた。

 選手たちの環境づくりなどもサポートしつつ「自分ができなかったことも含めて、いろんな話をしていきたい」と同コーチは言う。「一番の目標は五輪に出場して結果を出すこと」と語る坂井が、オリンピアンの助言も生かしながら未来を切り開く。

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2023年3月1日のニュース