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新国立撤回から2カ月…下村文科相、引責パフォーマンス?

[ 2015年9月26日 05:30 ]

 下村博文文部科学相は25日の記者会見で、2020年東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場の総工費が膨張し、旧整備計画が白紙撤回に追い込まれた問題に関し「多くの国民に心配と迷惑を掛けた」として、24日に安倍晋三首相に閣僚の辞任を申し入れたことを明らかにした。首相は「辞任には値しないが、重く受け止めたい。内閣改造まではしっかり務めてほしい」と示すなど“大甘”采配ぶりが目立った。

 安倍首相は10月上旬の内閣改造での交代を検討しており、事実上の引責辞任だが、首相が白紙撤回を表明したのは7月17日。すでに2カ月が経過しており、永田町関係者からは「ケジメの取り方が遅い」「改造での交代は責任を取ったと言えるのか」と批判の声が上がっている。

 会見で下村氏は、今年4~9月の議員歳費を除く給与と賞与計約90万円の返納を表明。さらに、この時期での辞意について、競技場問題に関する第三者委員会が24日に自身の責任を指摘した報告書をまとめたことに触れ「国民のムーブメントの先頭に立って盛り上げる立場の中、政治的責任があると考えていた。報告書も出て、けじめをつけた」とやや硬い表情で話した。

 下村氏は同時に、報告書で責任を併記された日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長と、山中伸一・前文科事務次官の給与返納を発表した。

 第三者委員会で3者以外にも、“有害無益”と批判されたのがJSCの有識者会議だ。報告書には「各界の重鎮ぞろいであったことも影響し、実質は重要事項の意思決定に関する承認機関」「JSCの意思決定に大きな影響を及ぼした」と記されたが、同会議のトップである東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長へは聞き取りさえ行われていないお粗末さだ。

 政府は8月末に新たな整備計画を策定しているが、真相が曖昧なままでは、新計画にも疑惑の目が向けられるのは避けられない。

 ▼マラソン五輪メダリスト・有森裕子氏 文科省やJSCなど関わった全ての人がずさんだった。下村文科相が辞めて決着ということにせず、関係者全員が反省し、一刻も早く準備を進めるべきだ。新国立競技場建設をめぐる一連の問題で東京五輪にネガティブなイメージが付いてしまい、選手に余計なプレッシャーがかかるのではないかと心配だ。

 ▼スポーツ評論家・玉木正之氏 下村文科相は新国立競技場建設という国家プロジェクトの最高責任者だ。建設計画を白紙撤回した際、辞任を申し出るべきだった。第三者委員会に指摘されるまで判断を先送りにしたのは、自分に責任があると思っていないからだろう。最悪の自己診断といえ、閣僚の立場でこのような姿勢を見せれば、日本人全体のモラル低下につながってしまう。

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2015年9月26日のニュース