欧州2400メートルG1勝ちはエルコンドルパサーのみ

[ 2023年7月7日 05:05 ]

サンクルー大賞を制したエルコンドルパサー(AP)
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 【競馬人生劇場・平松さとし】この時期が来ると思い出す出来事がある。1999年、現地時間の7月4日。フランスのサンクルー競馬場でサンクルー大賞典(G1)が行われた。

 ドイツダービー(G1)勝ちにブリーダーズCターフ(G1)2着もあり、当時ヨーロッパ最強牝馬と呼ばれたボルジア、仏、愛ダービー馬ドリームウェル、バーデン大賞(G1)の勝ち馬タイガーヒル。そして、前年の凱旋門賞馬サガミックスなどが出走し、当時「ヨーロッパの最強メンバーがそろった」と言われた。

 ここに挑戦したのがエルコンドルパサーだ。前年、NHKマイルC(G1)とジャパンC(G1)を勝った同馬は、この年の凱旋門賞(G1)を目指し、約半年前の4月にはフランス入り。5月にイスパーン賞(G1)を2着した後、このサンクルー大賞典に駒を進めてきた。

 レースはラスト400メートルでタイガーヒルが抜け出しそうになった。しかし、その横をほぼ持ったままで抜け出してきたのがエルコンドルパサーだ。結果、日本からの挑戦者は2馬身半差をつけ堂々と優勝。後に凱旋門賞でも2着に善戦する能力の高さを示してみせた。

 この結果に満面の笑みを見せたのが騎乗した蛯名正義騎手(現調教師)。しかし、実はレース中に一歩違えば大きなアクシデントになっていたかも、というシーンがあったことを明かしてくれた。

 「道中、蹄鉄が飛んできて、頭をかすめていきました」

 タイガーヒルのペースメーカーとして出走していたソージャルティが落鉄。外れて蹴り上げられた蹄鉄が蛯名騎手の頭のすぐ脇を通過した。もし直撃していたらと思うとゾッとする一場面だったのだ。

 日本馬が強くなった現在、海外でのG1勝ちも珍しいことではなくなったが、当時は前年のシーキングザパールとタイキシャトルに次ぐわずか3例目の快挙だった。そして、それから24年となる現在も、ヨーロッパで2400メートルのG1を勝った馬はこの時のエルコンドルパサーしかいない。 (フリーライター)

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