秋デビューで開いた史上初牝馬3冠メジロラモーヌの運命

[ 2023年5月19日 05:00 ]

 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、牝馬クラシックの第2弾、オークス(G1)が東京競馬場で行われる。1冠目の桜花賞(G1)で豪快な末脚を披露したリバティアイランド(栗東・中内田充正厩舎)に早くも“牝馬3冠”の期待をかける声が聞こえるが、1986年、史上初の牝馬3冠馬となったのがメジロラモーヌだ。

 春に桜花賞とオークスを制した同馬は、秋には当時の牝馬3冠目となるエリザベス女王杯(G1)も優勝するのだが、この馬の凄かったのはそれぞれのトライアルレースも全て勝利したこと。いわば牝馬3冠路線をコンプリートしたわけだ。

 桜花賞とエリザベス女王杯(現在なら秋華賞)の前にひと叩きするのは分かるが、桜花賞を勝った馬が、オークス前に、トライアルも走るというのは、現在ではまず考えられない臨戦過程。当時としてもかなりハードと言われたが、その理由を、同馬を管理していた奥平真治元調教師(引退)に伺ったことがある。

 「ラモーヌはそれまでほぼ負け知らずだったけど、東京の芝でだけは勝っていませんでした。だから本番前に不安要素を取り除く意味で、使いました」

 桜花賞までの同馬の成績は7戦5勝。2度の敗戦はいずれも東京の芝コースで、他では5戦5勝だったのだ。結果、トライアルを2着に1馬身半の差で勝利すると、不安のなくなった本番ではその差をさらに広げ、2馬身半差で優勝。桜に続き樫の女王の座にも輝いた。

 さて、そんな史上初の牝馬3冠馬がデビューしたのは今でいう2歳(当時は3歳表記)の秋だった。ダート1400メートルの新馬戦で、2着につけた差は3秒1。さすが後の3冠馬らしい圧勝なのだが、前出の奥平氏によると、本来は夏の北海道でのデビューを予定していたそうだ。

 「実際、函館の検疫厩舎に入厩していました。でも、そこで視力が悪いと言われ、一度、牧場に帰さざるを得なくなったのです」

 秋に戻った同馬の視力に問題はなかったそうだが、予定通り函館でデビューしていたら、果たしてその後の彼女の馬生は違うものになっていたのかもしれない。 (フリーライター)

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2023年5月19日のニュース