「3歳ダート3冠創設」への期待と現実

[ 2022年7月1日 05:00 ]

 【大いに気にある!】6月21日付本紙が「24年 3歳ダート3冠創設」と報じたのは地方競馬主催団体の発表を受けてのもの。その競馬界にとってエポックメーキングな改革を改めて整理しておきたい。

 個人の感覚としてはいつかはJRAが主体となって整備するだろう、と思っていただけに「驚いた」というのが正直な感想だ。思い返せば、JRA現理事長が就任した直後にインタビューしたが、記者の「3歳ダート路線の整備は考えているか」との問いに「JRAは(日本)ダービーからダービーへというサイクルで3歳路線を考えている」という言葉でやんわり“否定”されたことが当時の取材ノートに記してある。実際JRAの番組編成を見れば今でもそれが貫かれているのは明らかだ。ただ、時は流れて海外のダート重賞を日本馬が勝利する現況。改革が必要との声が上がるタイミングで地方側からの提案があったなら、JRAとして断る必要はまったくなかった。

 地方側の整備の舞台となったのが大井。地方唯一の国際G1「東京大賞典」を開催し、コースの広さ、集客ともに地方トップに君臨する。現NAR理事長が直近まで大井競馬のトップを務めていたことを考えれば一気に話が進んだことに納得がいく。

 日本競馬という大きなくくりで俯瞰(ふかん)して見れば「強い馬づくり」の下、馬主と生産者にとって路線が広がることは間違いなく発展につながるだろう。さらにファンにとっても新たな視点での楽しみ方が増えるのは望むところだ。

 その一方で関係者の一部にはハレーションが起こっているのも事実。中央交流重賞の成績を見れば中央馬優勢は明らか。この改革で南関東にも素質の高い馬が集まるようになればいいが、賞金体系の違いから簡単ではないだろう。ましてや現状を知っているだけに「強い馬が出てくることを期待する」なんて言葉で軽々しくまとめられない。

 「南関のダービーがなくなった」

 図らずも南関東所属騎手が言ったその一言が重く響く。記者が提案したいのはかつて中央で「残念ダービー」と言われたレースがあったが、そんな重賞を東京ダービーの後に大井以外の南関3場に創設する、ということ。それが現実的な処方箋だと思う。

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2022年7月1日のニュース