【新潟新馬戦】ヒシシュシュ感謝の初陣 ヒシアマゾン孫娘に中舘師「意気に感じる」

[ 2020年8月28日 05:30 ]

厩舎のウォーキングマシンに入るヒシシュシュ (撮影・西川祐介)
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 平成のターフを席巻した女傑の切れ味と闘争心が令和によみがえる。93年阪神3歳牝馬S、94年エリザベス女王杯を制したヒシアマゾンの孫娘ヒシシュシュ(牝2=中舘、父ディープインパクト)が30日の新潟5R新馬戦(芝2000メートル)に田辺裕信(36)騎乗で出走する。偉大なる祖母の主戦を務めた中舘英二師(55)も絶賛する素質で女傑のドラマを引き継いでいく。

 わずか400キロの小さな鹿毛からあふれる才能のきらめきと血統の凄み。フランス語でシュシュ(素敵な)と命名された2歳牝馬の動きに中舘師の表情が緩む。「小柄だけどストライドが大きいので走ると小さく見せない。ヒシアマゾンもそうでした」。“平成の女傑”と呼ばれた祖母。馬格も毛色も違うが、その主戦を務めた同師は祖母と共通する名牝の相を感じ取る。祖母の全20戦中18戦の手綱を取った師は四半世紀前の記憶の糸をたぐり寄せた。

 黒鹿毛のヒシアマゾンが中山新馬戦を勝ったのは27年前。474キロだった。「でも当時はキュウリにボッコ(棒)を差したようなペラペラの馬。3歳になって見違えるほど成長していった。小さな体の孫娘にもそういう成長力があると思う。調教では感覚以上に速い時計を出してきます。小さくても持っているものは大きい」。キュウリにボッコ…。精霊馬のような女傑の若駒時代を知る主戦ならではの見立てだ。

 馬体を並べて無類の強さを発揮した女傑。そのカン性も受け継ぐ。「普段はおとなしい馬が要所要所できつい面を見せる。ゲート練習で自分も落とされています(笑い)」。中舘師は新潟2歳Sにデビュー2連勝中のブルーバードを送り出すが「ヒシシュシュの瞬発力も劣りません。これこそ切れる馬。この牝系からは重い馬も出ていますが父がディープインパクトだけに軽い」と続けた。

 ヒシアマゾンが老衰で死んだ昨年4月。同師は「あれほどの切れ味を持つ馬はめったにいない。今、調教師をやれるのもあの馬がいたから。感謝しかない」と生涯最良のパートナーの死を悼んだ。「この血統を任せてもらえて意気に感じる。孫娘をしっかり育てていきたい」。それから1年余、小さな孫娘はあふれる才能のきらめきと血統の凄みをのぞかせて初陣に臨む。亡き女傑からのシュシュ(素敵な)贈り物…。

 【ヒシアマゾン伝説】
 94年クリスタルC 鞍上中舘とともに重賞3勝目を狙ったヒシアマゾン。中団追走から4角では大外を回す。巧みなペースで逃げたタイキウルフを懸命に追いかけたが残り100メートルで絶望的な5馬身差。そこから一気に差を詰めて差し切った。

 94年エリザベス女王杯 当時は3歳限定戦。外国産馬のため春のクラシックに出られなかったが、3歳実力No・1を目指して出陣。直線ではオークス馬チョウカイキャロルとともに豪快に伸び、残り100メートルは火の出るような叩き合い。鼻差競り勝ち、重賞6連勝。世代トップ牝馬であることを印象づけた。

 ◆ヒシアマゾン 父シアトリカル 母ケイティーズ(母の父ノノアルコ) 美浦・中野隆良厩舎 馬主・阿部雅一郎氏 米国産 91年3月26日生まれ 黒鹿毛 戦績20戦10勝 総獲得賞金6億8690万円 93年JRA賞最優秀3歳牝馬、94年同最優秀4歳牝馬、95年同最優秀5歳以上牝馬。昨年4月15日、けい養先の米国ケンタッキー州ポロ・グリーン・ステイブルで老衰のため死んだ。28歳だった。

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