「ホウオウ」小笹芳央オーナー語る、勘定ではなく感情で動く

[ 2019年8月14日 05:30 ]

「ホウオウ」の冠で中央競馬で躍進を狙うリンクアンドモチベーション・小笹芳央代表取締役会長(撮影・西尾 大助)
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 競馬は人生の“モチベーション”だ。名物ホースマンに迫る「Ask You」。「ホウオウ」の冠名で知られる小笹芳央氏(58)を直撃した。今年のセレクトセールでは2日間で計11頭、総額12億8900万円(税抜き)を“爆買い”。馬主歴5年にして存在感十分の新進気鋭に、愛馬に対する思い、そして今後の夢を聞いた。

 ――7月のセレクトセールではアドマイヤテンバの2019(父ロードカナロア)を2億7000万円で購入するなど合計11頭をお買い上げ。
 「今年のセレクトは異常な価格だったけど当歳7頭、1歳4頭を購入できました。アドマイヤテンバとアゲヒバリ(ともに当歳)は特に楽しみ」

 ――競りで馬を選ぶ基準やポイントはあるか。
 「僕は血統派。芝の中長距離血統が好き。馬体については分からないので、血統を見る自分と、馬体を見る調教師の先生ですり合わせて、どの馬を競るか決めている。去年はキングカメハメハとロードカナロア産駒ばかり買ったけど、今年はディープインパクトも買っておこうと、繁殖にもできる牝馬2頭を購入。ディープの死は衝撃だった」

 ――今年の購入馬には高額馬がズラリ。
 「他の馬主さんとちょっと違うと思うのは、僕はトータルの予算は決めているが一頭一頭に“いくらまで”というキャップをはめないようにしている。1頭目が予算オーバーしたら、買うラインアップを変えればいい。そうやって今年も予算内に収まっている」

 ――ご自身にとってセレクトセールとは。
 「自分の中でダービーとセレクトセールが年間のカレンダーで最も大きい。セレクトセールをお正月と考えたら、ダービーが年末の節目。1歳が増えてきて、ようやく今は当歳にシフトできるようになってきた。当歳の方が“当たる”確率が高いんじゃないかと思っている」

 ――14年に馬主資格を取得。きっかけは。
 「自分の誕生日プレゼントということで、知人が14年の日本ダービー(優勝ワンアンドオンリー)の東京競馬場ダービールームに招いてくれた。ダービーを観戦してもの凄く感動し、馬主になろうと思った。その1カ月後のセレクトセールで2頭購入。まだ馬主免許を申請中だったので、買った瞬間は“ペット”ですよね(笑い)」

 ――弟の公也氏が先に馬主として活動していた。
 「自分もいつかと思っていましたが、弟は昔“事業そのものが投資なのに馬に投資するとかアホや。俺は馬主には絶対にならん”と格好いいこと言っていた。それなのに、カンブリア宮殿(テレビ東京系の番組)に一緒に出演した時に、VTRで弟が馬主として阪神競馬場で馬券を買っていた。それを見て“馬主やってるやん”って突っ込みました」

 ――公也氏は“テーオー”の冠名で知られている。ご自身はなぜホウオウを冠名にしたのか。
 「ホウオウは自分の名前=芳央の音読み。弟が公也(ともや)でイニシャルのT・Oからテーオーなので、帝王に対抗するなら法王がええなぁと思って。ホウオウとテーオーの対決をG1でやりたいですね。以前に御堂筋S(18年4月1日)で1回だけ対決して、テーオーフォルテが勝ちそうなところをホウオウドリームが差した。“すまんなあ”と弟にメールしたら“俺、今日、誕生日なのに”って返信がありました」

 ――馬主としての夢は。
 「夢はダービーを勝つこと。まず出たい。今までパフュームがオークス、カトリーヌが桜花賞(ともに16着)に出た。やはりクラシックというのは感動する。それと毎週、所有馬が出走することを目指している。毎週の楽しみを持ちたい。前者は頭数が少なくても、いい血統の馬を持てばいいと思うが、後者は頭数が必要。両方を狙い、馬主ランキングで30位以内に入ることが目標。今は100位前後なので年間15~20勝できるようになれば楽しいと思うし、その中にクラシックがあれば最高です」

 ――今、期待している所有馬は。
 「ホウオウサーベルは阿賀野川特別(18日、新潟10R)を勝てば菊花賞に向かいたい。ホウオウトゥルース(ダートG1・3勝のサウンドトゥルーの半弟)は、勝った後に去勢して9月くらいに復帰予定」

 ――小笹オーナーにとって馬主ライフとは。
 「人生の張り合い。今の生活から競馬というものを一切差し引いたら、土日どうやって過ごすんだろうと(笑い)。馬を持つことによって、牧場や厩舎の方など仕事とは別に楽しい人間関係が広がった。また、JRAがつくるレースやルール設計はコンサルタントとして勉強にもなる。例えば降級制度の廃止は、若い頃から活躍してねということと、新陳代謝を早めるJRAの方針だと思う。会社でいうと年功序列がなくなり、促成栽培的な方向転換と理解できる。社員の適性を探ることと競走馬の適性を探すのも似ている」

 ――自身が馬主となって思うこと。
 「新しい馬主さんには長いこと続けてほしいと思う。世界や人脈の広がりとか、競馬の深みを味わい尽くしてもらいたい。損得勘定じゃない面白い景色が見えるんじゃないかと思う。僕も元気なうちは続けたい。続けていれば、いいことがあるかなと。北島三郎さんは馬主歴53年だそうなので」

 ――人間は“勘定”ではなく“感情”で動くと、ご自身の著書で記している。
 「競馬は人生のモチベーションの一つになっている。ダービーを獲りたいという夢があるから、楽しい馬主ライフを送れています」

 ◆小笹 芳央(おざさ・よしひさ)1961年(昭36)5月18日生まれ、大阪府出身の58歳。早大政治経済学部卒業後、リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、「モチベーション」に着目した組織変革コンサルティング会社である株式会社リンクアンドモチベーションを00年に設立。同社代表取締役社長に就任。13年から代表取締役会長。現在、グループ14社の会長を務める。「会社の品格」「モチベーション・ドリブン 働き方改革で組織が壊れる前に」など著書は27作に及ぶ。14年馬主資格取得。本名名義で「ホウオウ」の冠名の競走馬を所有。中山馬主会監事。「テーオー」の冠名で知られる小笹公也氏は弟。

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