菜七子 騎手として「次の1勝」を目指す日々「恋愛も結婚も今は想像つかない」

[ 2018年8月26日 09:00 ]

<新潟12R>レースを制したセイウンリリシイ。鞍上の藤田菜七子騎手はJRA通算35勝でJRA女性騎手最多勝記録を達成した(撮影・郡司 修)
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 藤田菜七子(21=美浦・根本康広厩舎)は25日、新潟競馬場で行われた第12Rで2番人気セイウンリリシイに騎乗して逃げ切り勝ち。自己最多となる年間15勝目と同時に、牧原(現姓・増沢)由貴子と並んでいた女性騎手のJRA最多勝利記録を更新する通算35勝目を挙げた。デビューからわずか2年半足らずでの新記録達成。新たな歴史を刻んだ菜七子はスポニチ本紙に独占手記を寄稿し、一ジョッキーとして「次の1勝」への熱い思い、今後の騎手人生、女性としてのプライベート観など赤裸々に語った。

 新記録はたくさんの馬に乗せていただいたおかげです。記録は気にせず一鞍一鞍を大切に乗ろうと考えていましたが、たくさんの方に記録のことを言っていただけたのはとてもうれしく、ありがたかったので、その方たちのために早く1勝したいという気持ちはありました。(タイ記録の)34勝目を挙げた時は、母からもお祝いメールが届いたし、私の周りは本当に優しい人だらけ。道を切り開いてくれた先輩の女性騎手にも感謝したいです。

 私は数字の目標をつくったりしないし、「次の1勝」しか考えられないタイプ。だから、これで取材も減るのかな、とホッとしている部分はあります(笑い)。ただ、自分自身この記録には決して満足してないし、一つの通過点。今後の目標もこれまでと変わらず、「次の1勝」を積み重ねていくことですね。

 35勝の中で一番思い出に残っているのは、やはりネイチャーポイント(16年5月28日の東京2R)。自厩舎(根本厩舎)で初めて乗せてもらった馬だし、ゲート練習も何度も一緒にした。厩務員さんやみんなで力を合わせて勝つことができたレースでした。そう言えば、その年の20歳の誕生日に頂いたケーキにもネイチャーポイントが描かれていました。逆に、私は勝てなかったレースは全て悔しい。だから、35勝を挙げた今日ぐらいは自分を褒めてあげたいかって聞かれても、それはない。ジョッキーを続けている限りないんじゃないですか。

 本当に一日一日があっという間に終わり、デビューから2年半は一瞬で過ぎ去った感覚です。たまの休日は寝て疲れを取るか、スマホゲームをしてリラックスしています。20歳になってお酒も飲んでみたのですが、よくいう“つぶれる”ほど飲んだことはありません。自分の限界が分からないのですが、記憶をなくしたりするのが怖いのでいつもセーブしちゃいます(笑い)。女性の厩務員さんたちとの女子会で、何てことのない話をするのがストレス発散ですね。

 大学に進学している友人とディズニーランドに遊びに行ったりする時も割り勘。みんな自分を特別扱いすることなく、昔と同じように接してくれるので、ありがたいですね。ただ、この仕事をしている自分の感覚が特殊すぎて、恋愛や結婚観は同世代の女の子とズレているなと思います。結婚の話とかをされても私は想像がつかなすぎてついていけないけど、今はそれでいいと思っています。今は毎日が必死なんです。

 まだまだ騎乗も未熟で、何かを言える立場にはないですが、(私を見て)競馬に携わる女性が増えてくれたらいいですね。今後出てくる女性騎手のお手本になれるよう、負けないように頑張りたい。

 そして、いつか女性としてではなく、普通の一人のジョッキーとして勝てるように。いつか大きな舞台でも騎乗依頼していただけるような騎手になりたいです。(JRA騎手)

 ◆藤田 菜七子(ふじた・ななこ)1997年(平9)8月9日生まれ、茨城県守谷市出身の21歳。16年3月5日、美浦・根本厩舎からJRAで16年ぶりの女性騎手としてデビュー。同年4月10日の福島9Rサニーデイズで初勝利(51戦目)。JRA通算1047戦35勝(25日現在)。1メートル57、45キロ。血液型A。空手初段、剣道2段。趣味は寝ること、読書。愛読書は伊坂幸太郎氏の「マリアビートル」。好きな食べ物は肉、スイーツ。好きな歌手は、One Direction(ワン・ダイレクション)、俳優は三浦春馬。

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