【スプリンターズS】衝撃!新伝説ロードカナロア 剛脚差し連覇

[ 2013年9月30日 06:00 ]

ハクサンムーン(左奥)との競り合いを制したロードカナロア

 これが世界のカナロアだ。秋G1シリーズの開幕を告げる「第47回スプリンターズS」が29日、中山競馬場で行われ、1番人気ロードカナロアが快勝。93、94年サクラバクシンオー以来史上2頭目のレース連覇。同時にG1出走機会5連勝も達成した。管理する安田隆行師(60)は11年カレンチャン、昨年のカナロアに続き史上2人目(3度目)となる同一G1・3連覇の偉業を成し遂げた。

【レース結果】

 G1・5連勝。ゴールの瞬間に岩田らしい派手なガッツポーズはなかった。その両手はロードカナロアの手綱を握り締めたまま。表情ひとつ変えなかった。「きょうは馬の底力で勝たせてもらった」。スタートでわずかに出遅れた。「正直、どうしようと思った」。一瞬、焦りを感じたが、そこは数々の修羅場をくぐり抜けた名手。「二の脚があるし馬群にも突っ込んでいける」。気持ちを切り替えた。

 中団馬群で呼吸を整えると最大で8馬身ほどあった逃げるハクサンムーンとの差を徐々に詰めた。直線入り口で馬場の中央に持ち出すと、内で抵抗する先行勢を1頭、また1頭と力でねじ伏せていく。残り50メートルまで先頭をキープしたハクサンを捉え、最後は3/4馬身差をつけてゴール板を駆け抜けた。

 中山に詰めかけた4万観衆には完勝と映ったレース。それでも岩田は「出遅れて前半は馬のリズムを崩した。直線も追い出してからモタついた。自分では決して納得していない」。ガッツポーズなきゴールの理由。お立ち台では衝撃の事実が明かされた。「負けたら引退と決まっていた。だからプレッシャーがきつかった」。単勝1・3倍の断然人気で連敗は許されない状況。「久々に凄く緊張した。喉がカラカラ。勝って当たり前の馬。本当に勝てて良かった。うれしい」。喜びと安どをかみ締めるように、鞍上は1つ1つ言葉を絞り出した。

 「スタートで出はなをくじかれた瞬間はアッと思ったが、すぐに中団、好位と上がっていたので、あとはこの馬の競馬をしてくれると…」。安田師も薄氷を踏む思いだった。セントウルSでまさかの敗戦を喫してから本番まで、眠れぬ日々が続いた。「前走も100%の状態で勝てると確信していたが負けた。それでもファンは1番人気に支持してくれた。負けたらどうしようという気持ちがあった」。重圧と闘いながらの細心の調整に、愛馬は最高の形で応えた。「カナロアには教えられたことがたくさんある。本当に強い。感謝してもしきれない」

 同一G1・3連覇という偉業を成し遂げた安田師。だが、記録よりも「世界のカナロアとして恥ずかしくないレースをしてくれたのがうれしい」と、少年のような笑顔を見せた。年内引退の方針は変わらず、次走が本当のラストラン。指揮官は「マイルCS(11月17日、京都)か香港スプリント(12月8日、シャティン)、他にも選択肢を残しながらオーナーサイドと話し合いたい」とした上で「僕個人としては香港スプリントに絞りたい」。国際G1連覇を目標に掲げ、最後にこう付け加えた。「これでもう1回走れる。カナロアの走りをもっと見たかったから…」。競馬を愛する全ての人が、師と同じことを思ったはずだ。

 ◆ロードカナロア 父キングカメハメハ 母レディブラッサム(母の父ストームキャット)牡5歳 栗東・安田厩舎所属 馬主・ロードホースクラブ 生産者・北海道新ひだか町ケイアイファーム 戦績18戦12勝(うち中央17戦11勝) 総獲得賞金7億5520万900円。

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