美浦は現在「熱中症」ゼロ!猛暑もバッチリ、各厩舎の夏バテ対策

[ 2013年7月30日 06:00 ]

手塚厩舎に設置されている冷房機

 馬にも熱中症がある!記録的な猛暑が続いた7月。列島各地で熱中症患者が急増したが、競走馬は大丈夫だろうか。今週は馬の熱中症と各厩舎の知恵を絞った予防法、さらに、猛暑に耐えきれず夏負けしてしまった馬の見分け方まで、まとめて紹介する。

 レース後、担当厩務員に手綱を引かれて厩舎にたどり着いた途端、鼻孔を膨らませてバタリと倒れる。急いでホースの水を掛けてやると、意識を取り戻して再び立ち上がった。夏の新潟競馬で見られる典型的な熱中症である。

 「馬の熱中症は暑いときに最高レベルの運動をした場合に起こる、脳の神経疾患です。過去3年の統計では、美浦トレセン在厩馬約2000頭のうち毎年10~17頭が発症しています」と語るのが同トレセン競走馬診療所の笹川忠夫臨床獣医役。熱中症の発生は6、7月から始まり、8月をピークに残暑が厳しい9月まで続く。今年、関東地方は平年より15日早い7月6日に梅雨明け。10日連続で30度を超す猛暑日となった。熱中症は増えているのか。「美浦では一頭も確認されていません。今後は予断を許しませんが、熱中症を防ごうとする各厩舎の意識が発症ゼロにつながっているのではないでしょうか」(同獣医役)。そこで、夏バテ防止を兼ねた厩舎の猛暑対策を紹介してみよう。

 最もポピュラーなのが葦(あし)のブラインド。古くから海の家で使われている「よしず」だ。5年前、トレセンで最初に取り入れた高橋祥師は「日差しを遮るし、心地良い風が隙間から馬房へ流れて気温が3度下がる。昔ながらの人間の知恵だね」と、厩舎棟をくまなく覆った葦のカーテンに涼しげな視線を送る。納品している近隣の増尾電気によれば、5年間で全体の約3分の1、42厩舎にまで広まったという。

 「いろいろ試したけど、これが一番」と古賀史師が明かすのが「冷風扇」。水の気化熱を利用した冷房装置で、馬房に涼風を送り込むと温度が4度下がる。各馬房に1台ずつ計20台、約200万円の出費となったが、「競馬場にも持ち運びできるし、最新式の冷風扇を使い出してからは夏負けゼロだ」と豪語する。

 よしず、冷風扇に「クーラー」の重装備で万全の対策を講じるのが手塚厩舎。「室温25度の設定でアユサン(桜花賞馬)も元気いっぱい。ただ、(隣り合わせた)自分の部屋にもクーラーをつけると、ブレーカーが飛んじゃうから我慢している」。冷房にまで及ぶ馬優先主義。手塚師は蒸し暑い自室で額の汗を拭った。

 調教師の知恵、お金、汗を結集した猛暑対策。そんな努力も報われず、夏負けにかかってしまった馬の見分け方を最後に伝授。危険な兆候は…

(1)馬体重の激減(食欲減退)

(2)汗をかかない(自律神経の鈍化)

(3)目の周りの毛が抜ける

(4)こう丸が腫れる

 ただし、照りつけの激しいパドックで馬の夏負けチェックに夢中になりすぎ、自身が熱中症にかからないよう、くれぐれもご用心!

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