【日本ダービー】エースで狙う!池江師、史上初連覇へ

[ 2012年5月21日 06:00 ]

<日本ダービー>史上初のダービー「トレーナー連覇」に挑む池江師

 さあ、競馬の祭典「ダービー」へ向けての1週間のスタートだ。09年に生産されたサラブレッド7572頭の頂点を決める「第79回ダービー」は27日、東京競馬場でゲートインする。昨年のダービーをオルフェーヴルで制した池江泰寿調教師(43)は皐月賞2着のワールドエース、京都新聞杯勝ちのトーセンホマレボシの2頭出しで史上初の「トレーナー連覇」に挑む。その胸の内をロングインタビューで語り尽くしてもらった。

 ――史上初のトレーナーのダービー連覇へ、今年も2頭を出走させる。

 池江師 ウチが預かっている馬のレベルからすると“2頭しか出していない”と感じる。ウチに預けてくれる馬主さんはG1を勝ちたい、クラシックを勝ちたいと思って預けてくれているし、それだけの馬を預かっている。出られなかった馬のことを思えば、まだまだだと思う。

 ――ワールドエースの皐月賞は外を回って2着。

 皐月賞に限らず、長くG1レースを見てきたが、今年の皐月賞は馬場、展開、ペース、どれも特殊だった。その中で自分の形の競馬をして2着だから力はある。勝ち馬の血統(ゴールドシップ=オルフェーヴルと同じステイゴールド×メジロマックイーン)の強さは身にしみて分かっている。2馬身半差は大きいが、再戦を楽しみにしている。祐一が後悔しないレースをしてくれればいい。

 ――ワールドエースは福永とのコンビ。

 デビュー前から祐一に調教をお願いしていた。なぜ祐一か?切れ味がありそうだが、一歩間違えたら暴走しそうな面があった。祐一なら教え込んでいけると思った。若駒Sは2着に敗れたが、先行馬を追いかけずに無理せず抑え込んだのがその後(の活躍)につながったと思う。

 ――福永にとってダービージョッキーになる大きなチャンス。

 自分が競馬学校の厩務員課程に入ったのと、祐一が騎手課程に入ったのが同時期。他の子と取り組む姿勢が違った。自分は乗馬しか経験がなかったので、牧場経験のある小島茂之さん(現調教師)らに夕食後、木馬で教えてもらっていた。1年生でトレーニングルームに来ていたのは彼だけだった。もともと祐一は小さい頃から知っている。小学生の頃は本当に小さくて、ランドセルに背負われているような感じだった。バスで学校に通っていたんだけど、揺れるバスの中で妹の手をずっと握っていた姿が印象に残っている。お父さん(落馬事故で引退した洋一さん)のこともそうだけど、本当に家族思いな男。ワールドエースで祐一に協力できたらうれしいね。

 ――験は担ぐか。

 凄く担ぐ。昨年は皐月賞の前日に新宿駅西口の吉野家で食べたらオルフェーヴルが勝ったから、ダービーのときも金曜夜に食べに行った。スーツもダービー、菊花賞、天皇賞・秋(トーセンジョーダンでV)と同じ。ただ、今年の皐月賞と天皇賞・春は結果が出なかったから、年がかわるとダメなのかも。今年のダービーはどこで食べようかな。食べる物にしても着る物にしても、やっぱり競馬と関連づけてしまう。祝勝会とかに出ると会員さんがみんな自分なりの験担ぎをしていて面白いよ。

 ――究極の夢は。

 3歳春にケンタッキーダービーを勝って、英ダービーを勝って、凱旋門賞、ブリーダーズCクラシック、ドバイワールドCを勝つ。そういう馬に出合って自分で育ててみたい。そういう馬に出合ったときにどういう過程でケンタッキーダービーに臨むかとか、イギリスではどこで調整しようかとか、そういうプランは今から考えている。

 ――ダービーの重みを感じたのはいつ頃?

 池江師 親父(池江泰郎元調教師=スポニチ本紙評論家)が食卓でいつもダービーを勝ちたいと言っていたから、子供の頃からダービーが頂点だというのは分かっていた。ただ、みんなが“ダービーだけは違う”と言うが、何がどう違うのかは教えてくれなかった。それは知りたかった。

 ――実際に昨年勝って違いは分かったか。

 やっぱりダービーだけは違うと思った。これで自分が70歳で定年する時に、絶対いい調教師生活を送れたと思うだろう。有馬記念や宝塚記念を勝った時も、そこまでは思わなかった。

 ――ダービートレーナーになって何か変わった?

 責任を感じた。成績も技術も、もっと向上していかなければと。ダービートレーナーという称号は消えない。2勝目、3勝目、海外のビッグレースも勝たなければいけないと思う。

 ――ダービーを勝てたことで余裕みたいなものは出てきた?

 1つ勝ったからもういいという気持ちはない。自分は1回勝ったが、馬にとっては一生に1度しかない機会。馬に携わるいろいろな人にとってもそう。ワールドエースは(オルフェーヴルと)厩務員、馬主は同じだが、会員さんや生産者は違うから。

 ――ダービーを勝って得たものは。

 オルフェーヴルは馬自身の絶対能力で勝てた部分はあるが、厩舎のやってきたことが間違ってはいなかったとも思った。自信のようなものはついた。それまでは勝ち星こそ伸びていたが、ウチのやり方でダービーを獲れるのか、勝てるのかと思ったこともあった。何か魔法のようなものがあるのかなとも考えていたが、魔法は必要なかった。丁寧に馬を観察して、丁寧に調教していけばいい。基本的なこと、当たり前のことの積み重ね。ダービーを勝ったことで調教師としての能力がアップするわけではないが、基本こそ大事だと分かったことは大きい。

 ――競馬以外の息抜きみたいな趣味はある?

 競馬のことを考えるのは自分にとって呼吸したり眠ったりするのと同じくらいのこと。仕事だけど趣味でもある。馬の状態は半日で変化するし、あまり馬から離れると不安になる。仮に1週間の旅行を入れたりしたら、馬のことが気になって旅行自体を楽しめないと思う。旅に出るとしても1日くらい。それは親父もそうだった。自分にとって一番楽しいのはレースで勝つこと。ドーパミン(生体内で合成されるアドレナリン・ノルアドレナリンの前駆物質)が出ているのが自分で分かる。これに勝るものはない。

 ――競馬がつまらないと思うことはない?

 難しいと思うことはあるが、つまらないと思ったことはない。それだけ奥が深い。奥が深いからこそ、僕のような未熟者でもそこそこ結果を出せるんだと思う。ペーパーテストでも難易度が高過ぎるとかえって差がつかないでしょう。だからこそ、他を引き離す結果を残したいとも思う。

続きを表示

この記事のフォト

2012年5月21日のニュース